北尾吉孝日記


「長期投資と短期投資のどちらが良いのか」
長者村の皆様からリクエストの多いテーマですね(笑)

これにはまず、それぞれの金銭的な状況を考えなければいけません。
投資スタンスを決める上で大事なことは金銭的余裕があるのかどうか。
早く回収する必要があるのかどうか、ということです。
余裕がない方の場合は、少し上がったところで利確させたくなるでしょうし、あるいは少し下がったところで損切りしたくなるでしょう。
したがって、長期投資をしたくても金銭的余裕の問題から売らざるを得ないという方がいらっしゃるかと思います。
長期投資を考える場合には、金銭的な余裕がなければ厳しいと言えるでしょう。

次に考えるのは「変化」です。
日本はもちろんのこと世界中で起こる政治・経済上の様々な変化に、株価は日々影響されます。
この不確定要素となる大きな変化が多い時、または起こりそうな時、こういった場合には短期投資の方が好まれる傾向にありますし、その方が良いと言われることについては僕も理解しています。
他方、マクロ的に見て相場が安定しており、さらに相場に大きな影響を与えるような大きな変化が予測されないような場合には、長期で持つというスタンスの方も大勢いらっしゃいます。

したがって、短期か長期か考える場合には
・資金的余裕があるか
・経済情勢がマクロやセミマクロの視点からみて安定しているか
・事業内容や経営者を見て、企業の成長性があるか
を見て判断する必要があると思います。
判断の結果、長期で持つことの出来る株であった場合には、長期で持ったほうがパフォーマンスは高くなる可能性が高いと僕は考えています。
また、ある会社の事業や将来性に賭けるという意味で投資をする場合には、やはり長期投資にならざるを得ないと思います。

例えばウォーレン・バフェットの持ち方というのは決して短期で売り買いしているわけではありません。
彼が良いと思った会社、例えばジレットやコカ・コーラを本当に長期間持ち続けることによって、彼は投資を成功させたのです。
あるいはマイクロソフトのビル・ゲイツは、毎年決まった分だけ自分の持ち株を売却することにしていますが、基本的に長期で持ち続けたことによって最大の資産を作り上げたのです。
日本で言いますと、ソフトバンクの孫さんですね。
彼は日本一のお金持ちと言われていますが、彼もソフトバンクを売らずに持ち続けているからこそ日本一のお金持ちになっているのです。

僕自身も自分で見て「良い」と思った会社の株は売ろうとは考えません。
そこに夢があり、事業ビジョンが鮮明に描かれているのであれば、そして将来の成長の可能性について自分が自信を持っているのであれば、長期投資に越したことはないと考えているのです。

先日、アクサ・インベストメント・マネージャーズ社で最もパフォーマンスの良いファンドであるタレント・ファンドの運用者が僕に会いに来られましたが、このファンドは会社の数字はほとんどみないで経営者がどういう人物で、どんな経営哲学を持ち、どういうビジョンと戦略で経営しているかといったことだけで投資対象を決め大変良い運用成績をあげているのです。
もちろん長期的な投資です。




 

著書について

2007年6月1日 18:57

あっと言う間に6月です。
光陰矢の如しとはよく言ったものですね。

先日、僕が書いた『何のために働くのか』の感想文のコンテストが致知出版で行われ、その感想文の一部を読ませていただきました。
僕の書いた本が非常に多くの方々に読まれ、悩みの解決や生き方の参考にしていただいたということを大変嬉しく思いました。
いただいたメッセージや感想文を読みながら、「ああ、これが作家の喜びというものか」と初めて実感したのです。

その時、嬉しく思ったと同時に「なぜこの本が多くの方々に受け入れられたのか」ということを自分なりに考えてみました。
一つは、やはり『論語』をはじめとする中国古典の持つ魅力の大きさでしょうか。
前の著書『中国古典からもらった不思議な力』でも書いたように、中国古典に書かれている知恵というものには現代になっても褪せることのない魅力があるのだと思います。
例えば「巧言令色鮮矣仁(口先が巧みで角のない表情をする者に、誠実な人間は殆どいない)」という言葉がありますが、これは漢字で書くとたったの七文字ですが、この七文字が人生の真理をズバッと言っているのです。
思えば、この『論語』という著書は書かれてから二千数百年も経っているのですが、今読んでも新鮮で、読み手の心に深く突き刺さります。
人間が生まれ、生きていくということは二千数百年前も今も何も変わらないことなのでしょう。
そういう意味で、皆様方にも古典を読んでいただきたいと思います。

中国古典だけではなく、西洋の古典にも素晴らしいものがあります。
例えば『ソクラテスの弁明』というプラトンの著書がありますが、そこに書いてあることと『論語』に書いてあること、この二つに非常に多くの共通点があるということを、最近あらためて痛感しました。
ソクラテスと孔子、ちょうど同じくらいの時代に生まれた二人ですが、全く異なる地に生まれ、思想も異なるものかと思っていたのですが、共通点が随所に見られるのです。
西洋東洋問わず人類の宝として二千数百年以上も残っている著書は、やはり我々の精神の糧となるということを改めて実感しました。

この本が受け入れられた理由としてもう一つ考えられるのは、「歌は世につれ、世は歌につれ」という言葉もありますが、「時代の変化」ではないでしょうか。
日本人は古来より大変豊かな精神文化を育んできましたが、戦後になってこうしたものを捨ててきたように思います。
その結果として、世の中に様々な歪みが生じてきているのではないでしょうか。
虐待、いじめ、そして親殺しや子殺しのように信じられないような事件が起こり、ニートやフリーターの激増といった社会問題も起きているのです。
これはやはり、日本人が古来より育んできた精神文化を捨ててしまったことに起因するのではないかと僕は考えているのですが、太平洋戦争が終結してから60年という時が経ち、一つの節目としてそうした精神文化をもう一度見直すべき時が来たのではないでしょうか。
こういう中で、僕の著書に書かれている日本人の伝統的な文化や考え方が受け入れられたのではないかと思うのです。

この60年という歳月、これを今度は経済の世界で考えてみます。
景気循環論の中にコンドラチェフの波がありますが、これは50~60年周期で景気が循環していることを表している波ですが、その要因は技術革新であると考えられています。
そのほかにも景気循環の波にはグズネッツの波(20年周期)やジュグラー波(10年)やキチンの波(40ヶ月)などがあり、僕は母校の慶応やケンブリッジ大学で勉強した記憶がありますが、今回はコンドラチェフの波から今という時代がどういうものであるかを考てみようと思います。
日本における2百年程度の資本主義の歴史では、過去に4回のコンドラチェフ波がありましたが、まさに第5の波が押し寄せようとしているのが今ではないでしょうか。第4波の谷は1949年ぐらいだと言われていますが、デフレからは来年には脱却出来そうですし、今まさに第5波の谷が形成されてそこから本格的な上昇波動へ行くところなのです。
その要因となる技術革新は、おそらくインターネットとバイオの分野で起きるのではないでしょうか。

そして我々SBIグループはまさにその中心にいます。
Finance1.0からFinance2.0へ、ということを最近僕は盛んに言っているのですが、SBIグループはインターネット金融分野での革新を起こし、時代を牽引するべき存在なのです。
だから、我々はこういう時代の中で次から次へと新しいことへと果敢に挑戦していなければならないのだと思います。




 

イートレ長者村の皆様にはいつも多くのコメントをいただき、勉強させていただいております。
特にkibouさんの中国に対する知識の深さには恐れ入りました、有難う御座います。

今回は僕の著書である「人物をつくる」に掲載してある中国に対する見解を紹介します。
2001年~2002年に僕が内の会社の役職員に対して月初の朝礼で話した内容ですが、僕の基本的な物の見方や考え方はその頃と変わっていないので御参考になればと思い抜粋しておきます。
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「人物をつくる」132P~
話は変わりますが、週末、中国がWTOに加盟しました。今朝のテレビでは、WTO加盟に対する中国側の期待や、中国の国営企業や人民が抱いている不安について論じられていたようです。

 中国のWTO加盟は、約十五年間にわたる様々な議論を経てようやく決まりましたが、これは日本にも、世界にも、大変な影響を与えるのではないかと思います。
 ところが、日本における期待と不安、あるいは世界における期待と不安については、テレビや新聞でほとんど論じられていません。本来ならば、このようなことに思いをいたす必要があるのではないかと思うのです。
 中国という国は、日本の20数倍の国土と、13億の民を有する国です。従って、あらゆる産業にとって、その国自体が膨大なマーケットです。
 そして既に、貿易額で見れば輸出額2,500億ドルで世界第7位の国です。また、世界シェアの貿易額を見ると、輸出で約4パーセント、輸入で約3.2パーセントを有しており、大変な大国になっているのです。
 その大国がWTOに加盟すれば、今後3年以内に外資系を含めたあらゆる企業が自由に輸出入できるという、貿易権が付与されることになります。
 2010年には、全工業製品の平均で約16パーセントの関税率を約9パーセントまで大幅に下げていこうという話もあります。

 また、よくご存知のように、その膨大な人口を背景にした中国の人件費は、日本の30分の1から50分の1といわれます。
 さらに、「後発の利」(Latecomers’ advantage)によって、世界最先端の技術やノウハウを一挙に導入しています。彼らは、旧いものに関係なく、最新の技術を導入しているのです。
 日本でも明治維新がそうでした。手工業から段階的に発展するのではなく、最先端の技術を一挙に導入したのです。
 ですから、中国は、決して技術では劣っていません。
 皆さんが実際に中国へ行ったら驚かれると思いますけれども、全然劣っていません。
 そしてまた、中国の人口が日本の10倍だとすれば、日本人の10倍もの優秀な人がいます。きわめて優秀な人材が沢山いるわけです。

 この中国が、我々のコンペティターとして登場してきます。かつて日本は、世界の工場といわれましたが、現在では、中国が世界の工場となってきているのです。
 もちろん問題なのは技術力ですから、常に日本がより高度な技術で中国を凌駕できるならば良いのです。しかし、その可能性は、きわめて低いのではないかと思います。

 あと何年かすれば、恐らく中国は世界一の大国になります。
 そのとき、これまで日本をさせてきた製造業がいったいどうなっているのかと創造すると、背筋が寒くなるような思いがします。
 もちろん中国にとっても、一方で大変な犠牲を払うことは、間違いがありません。生産性の低い非効率な国営企業は、次々と倒産していくでしょう。
 しかし、外資はどんどん中国に資本を投下し、最新の技術で進出していきます。
 おそらくは、いま中国が持っているものを失うよりも、はるかに大きいものを得ることになるのでしょう。是非皆さんには、今後の中国に大いに関心を持っていただきたいと思います。
 そして、我々がこれから中国でどのような事業を展開する価値追う事を真剣に考えていただきたいと思います。
(2001年11月)

「人物をつくる」153P~
これまで私は、「中国が日本に取って代わって世界の工場になる」といい続けてきましたが、実は、もう一つ確信を持てないことがあります。
 私のように経済や経済史をある程度専門に勉強した人間にとって、中国には、近代資本主義という目から見ると非常に不足しているものがあるのです。
 近代資本主義のまさに根底要素という部分、「私的所有権」が欠けているのです。
 中国では、私的所有権が認められていません。現在では認められているかのように言われていますが、実際には様々な制約があり、また法制度が変われば簡単になくなってしまうような状況です。
 では、近代資本主義体制における私的所有権とはいったい何か。
 一つ目は、これは経済学者だけではなく法学者も言っていることですが、私的所有権とは、その所有物に対する「絶対的な支配権」です。すなわち、所有者が所有物に対していかなる行為も、いかなる経済行為も為し得るということです。
 これが近代資本主義における私的所有のまず一つの特徴です。

 二つ目は、「抽象性」といわれるものです。つまり、観念的に、論理的にその存在や内容を決められるということです。
 具体的には、ある人が、自分の所有していない家に住んでいることを考えてみれば分かりやすいと思います。この場合では、「オキュペイション」(住んでいること)と「ポゼッション」(所有していること)が分離しているということ。これが私的所有権の持つ抽象性の意味です。

 今申し上げたような二つの特徴が、近代資本主義というものを発芽させ、発育させ、そして発展させてきたと、私は考えています。
 ところが中国という国を見ると、近代的な意味における所有権の確立どころか、確保さえもが十分になされていないのです。
 従って、もしかするとある時点で、かつてソ連や東欧の共産圏が経験したような「崩壊」が起こり、そのうえで真の経済大国になるのではないかという予感があります。

 このような理由で、これまで私は中国に挑戦できなかったのです。
 確かに、市場は大きく、おそらく世界の工場になるだろうと思いながら、所有権が確保されていない体制というものに本当に発展があるのかと考えてしまうのです。
 日本ですら、まだある意味では所有の抽象性については、欧米に比べるとはっきりしていない部分がたくさんあります。
 欧米は、絶対性や抽象制という点について非常に分かりやすく、明確に規定されています。ですから、まさに資本主義というものがこれらの国で起こり、発展してきたのだろうと思います。そのような意味では、日本もまだ、見よう見まねのところがあります。
 このような理由から、おそらく中国が真の経済大国になるには、まだ長い歳月がかかるのではないかと思っています。この点に関しては、皆さんにも色々な意見があると思いますので、ぜひ聞かせていただきたいと思います。
(2002年3月)




 


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