北尾吉孝日記

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日本と欧米を比較しますと、リスクマネーから生じるリターンに対する課税についての考え方が全く異なることがわかります。これは欧米だけではなく新興諸国と比較しても日本の課税当局の考え方というものは世界の非常識ではないかと思うこともあります。
キャピタルゲイン課税については、前にもこの日記上でも書かせていただきましたが、リスクを取って得られるキャピタルゲインとリスクを取らないで得られる預金金利などのインカムゲインを同じ課税率にするべき、という考え方には疑問を感じます。
投資家はリスクを取っているのですから、そのリスクに対するインセンティブが無ければ投資をする意味がありません。
そして、これが投資における当たり前の考え方であり、世界の常識であると私は考えています。下記に同様の幾つかの例をあげてみましょう。

◆エンジェル税制について見てみますと、日本もエンジェル税制を導入して効果を期待していたのでしょうが、日本での適用は15億円程度であり、これでは何のためにエンジェル税制を作ったのかわからないという状況です。
英国のエンジェル制度ではエンジェルとして投資した時点で投資金額の20%は所得から控除されます。しかし日本の場合、控除する金額は投資した金額の20%ということで同じなのですが、控除する対象が所得ではなく投資時点でその年の株式の譲渡益からとなるわけです。

◆本日(26日)の日経新聞に欧州にて富裕税の廃止が相次ぐという記事が出ておりましたが、日本の考え方はまさに欧米と逆行しているということです。つまり、日本における課税の考え方には、富裕層の優遇をしてはならない、富裕層の優遇となる可能性は排除しなければならない、というものが根底にあるのです。

◆海外からの我国ベンチャーキャピタルファンドへの投資も我国の源泉税が20%も課せられるため日本のベンチャー企業への投資を見送らざるを得ません。このような制度の下で海外からのリスクマネーの流入を期待できるはずもないと私は思います。諸外国では、リスクマネーを海外から呼び込むことを考えているのです。

本日(26日)の日経新聞にはIPOの件数が急減したという記事も出ていますが、その原因は審査の厳格化にあります。
そして新規上場の際の公開引き受けに特化した証券会社であるIPO証券も国内での業務を撤退し、韓国への上場斡旋に切り替えたのです。
海外の新興市場は日本の新興市場と比べますと審査も厳しくなく、準備機関も短いので、
新興企業にとっては負担も少なくて済みます。さらに、マーケットのパフォーマンスも日本よりここ一年ははるかに海外のマーケットが良い状況です。
だから、日本の幾つかの新規上場を狙う企業が市場としてのパフォーマンスも良く、上場コストも安い海外への市場へと出て行ってしまうということになってくるのです。
海外の新興市場といえば、シンガポールのカタリスト市場やロンドンのエイム市場などがありますが、シンガポールのカタリスト市場では上場企業の時価総額に制限を設けず、株主が200人いればいいという基準にすることで、アジア諸国を中心に100社以上が上場しています。
それに対して日本の新興市場は上場基準をさらに厳しくするという方針であり、日本に上場することのインセンティブはいよいよ無くなってきているのです。

2008年、市場を再び活気付けるということが日本における一つの大きな課題となると思いますが、そのために重要な事は海外からのリスクマネーを入れること、そしてIPOなどによって国内での取引を活性化させることであると思います。
しかし、今の制度では海外からの投資は期待できないだけでなく、日本国内からも企業や資金が出て行くことでしょう。
脱工業化社会となった今、国際的に競争力のある産業を育てていこうとしても日本の今の税制や日本の行政の考え方では、それを育てていくための資金は入ってこないでしょう。




 

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