北尾吉孝日記

『経済成長のツケ』

2008年5月15日 13:59
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ここ数年間、新興工業国が目覚しい経済発展を続けてきたことについては、もはや何も申し上げることはありませんが、その経済成長の結果として必然的に生じる「影」のような部分について考察する必要はあると思います。それは何かと言えば、インフレーションのことであります。このインフレーションの抑制を上手に行えない場合、経済成長の効果が無くなる、あるいは経済成長を継続することが困難になるため、成長一辺倒であった新興工業国は今後インフレーションと戦っていかねばならないという状況に入ります。

インフレーションはコストプッシュインフレーションとディマンドプルインフレーション、両者の混合型、大きく言ってこの三つのタイプに分けられます。コストプッシュ型については例えば今中国で人件費が大幅に高騰しているという事実があります。ディマンドプル型については、例えば経済発展のために鉄が必要となり、それにより鉄鋼需要が増加し、結果として鉄鉱石の価格も上がります。その鉄鉱石を中国は世界中で買い求め、世界中での価格の高騰をまねき、さらなる価格上昇をもたらしています。原油についても同様に、中国は1996年以来、原油需要の急激な増加により原油輸入国になって久しいですが、世界における原油のアグレッシブバイヤーになっています。さらに経済成長の結果として、所得水準が上がり豊かになることで、経済発展を支える鉄鉱石や原油だけではなく、あらゆる消費財や生産財の需要が増加し、世界中からそれらを買い漁るようになっております。これが大きなディマンドプルインフレーションの流れになっています。中国はこうした混合型インフレのコントロールを主として金融引き締めにより行ってきています。

現在のオリンピックに向けた旺盛な消費需要や、あるいはさらなる経済成長に向けた設備投資需要は、金融引き締めによって簡単に落ちることはありません。中国はこれから激しいインフレと戦うという難しい局面へ向かいつつあります。この急騰したインフレ率を下げるためには、中国の輸出商品の価格を上げ、輸入商品の価格を下げること、つまり人民元の切り上げを中途半端な形ではなく本格的に行うことが必要であると思います。今の中国の状況を見ていると(インドやベトナムについても同様に)、結局これがインフレ抑制効果として一時的に輸出の低下はあるでしょうが最も即効性のある方法ではないかと思います。

5月8日の日経新聞に「アジア主要8市場の株価指数騰落率(%)」と題した一覧表が出ていましたが、それを見るとそのような局面を織り込み始めたのか、4月の株式相場では日本株のパフォーマンスが最も良かったことが分かります。こうしたことが起きた理由を考えてみるに、「山高ければ谷深し」という中で、これまでパフォーマンスの良かった中国やインドなどBRICs諸国の株価が大きく下落したということもありますが、日本が外国人から見直された部分もあると思います。それはバブルがはじけ、戦後先進主要国の中で初めてデフレーション(消費者物価上昇率が対前年比で下落していく状況)を経験し、これが持続し、未だデフレから脱却できていない中で、ガソリンを始め、その他様々な輸入品の価格が高騰することで、デフレが結果として解消されるということであります。また世界中の物価が上昇していく中で、今までデフレであったため日本はほぼゼロ金利状況を維持しながらそれ程物価が高くなりません。従ってインフレ圧力の少ない国として、一つの評価が出てきたということがあります。

それともう一つ、外国人投資家がこの4月に日本株を買った背景には、公定歩合等の金利が上がりだす局面が日本に来た場合、ドルやユーロに対して円が上がるだろうという考えがあるからです。従って株が超安値であり、金利も上がっていく可能性が高く、為替もこれからはどちらかと言うと円高方向になっていくという状況で、外国人投資家が投資額を少し増加させようという流れになってきています。最近私の所に来る投資家も、このような私の意見に皆さん同調しているようです。




 

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