北尾吉孝日記

『金融安定化法案』

2008年10月3日 14:11
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サブプライムローン問題に端を発する景気対策の一環として、米国政府がどのような対応の仕方を取ったかと言えば、まずは今年2月に減税法案を成立させ、約1500億ドルの減税を実施しました。しかし、その効果は限定的で問題解決に至らなかったことから、いよいよ金融安定化法案というものを議会にかけることになりました。1981年に多数の貯蓄貸付組合(S&L)が経営危機に直面し、そのような中で米国政府は整理信託公社(RTC)を設立して不良債権を買い上げたわけですが、今回はそれとほぼ同様の仕組みを最大7000億ドルと大規模化して用い、不良債権を買い取っていくことを考えました。

ところが、米国民主党大統領候補のオバマ議員までもがこの法案を通すべきだと発言していたにも関わらず、ブッシュ政権が「死に体」化していることもあり、予想に反し多数の共和党議員の造反により下院で否決されてしまいました。私はニューヨークに5年半住んでいたことがありますが、今回のことはある意味で米国という国を表しているなと感じました。

各議員は有権者から寄せられる法案への反対の声を代弁しなければならないのは言うまでもありません。今回のように納税者は自分たちの税金を一部の所に過剰に使うことに強く反対します。しかし、その一部の所、特に金融という世界において、それを使わなければ自分たちの生活に大変ネガティブな影響が出るということを、大多数の有権者が理解していないケースもあるのです。よく、一般的な米国人というのは偉大な田舎者であり、自国の事だけで他国の事を意に介さないと指摘されます。今回のことでそうした指摘も妥当と思わざるを得ないですね。

以前から申し上げている通り、例えば一番大きな問題として、ドルの信認のさらなる低下があります。つまりドルの信認が低下していくことで、その唯一の基軸通貨としての地位が崩れ、最終的にはドルの減価により米国人のリビング・スタンダードが下がるということを法案否決は意味しているわけです。一般的な有権者には、そのようなことまで思いを致さずに、声高に反対を叫ぶ人も多いのです。

今我々は、資本主義経済では常に起こり得るturmoil(ターモイル)のど真ん中にいます。しかし、それは金融市場で100年に一度あるかないかの大変なturmoilなのであります。今のようなタイミングで修正案が上院で可決されましたが、それも再び下院で否決されれば、金融市場は大混乱に陥りかねません。世界経済の安定を図るためにも、法案の早期成立こそが今最も大事なことであると確信しています。




 

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