北尾吉孝日記

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金融安定化法案が通ったにも関わらず、米国では株価が下がり、そして本日、日本でも大きく下げています。一体これが何を意味するかと一言でいえば、私は「パックス・アメリカーナの終焉の序章の始まり」であると思っています。この金融安定化法案の実効性については様々な議論がありますが、仮に7000億ドル全てが不良債権の購入に使われれば、アメリカの財政は更なる大きな負担を抱え、超財政赤字の状況になります。

所謂パックス・アメリカーナの象徴はドルが基軸通貨であることですが、超財政赤字はドルに対する信認を更に低下させていきます。今後貿易収支の大幅改善がなければ、ドルは基軸通貨としての役割を終える可能性があります。非常に短期間でFFレートを5.25%から2%まで下げましたが、おそらくバーナンキFRB議長はこの度の雇用統計の落ち込みを受け、FFレートを更に下げる可能性があります。そして、実際に引き下げられれば、金利安から更なるドルの独歩安となっていくでしょう。

最終的なドル基準通貨体制の終焉のとどめとしては、サウジアラビアがドルペッグ制を放棄することだと想定しています。もう既に中東産油国の中でもクウェートやバハーレーンがドルペッグ制から離脱をしており、今後そのような動きが加速化されてくる可能性があると思っています。

またドルの信認の低下について更に言えば、それは根本的には貿易収支の大幅赤字ということが原因だと考えています。これは中国を中心としたアジア諸国との貿易において、大赤字を米国が抱えているという事実から発生しているものであります。この日本も含めたアジア諸国との貿易赤字問題を解決し、貿易収支を立て直すためには、中国元の大幅な切り上げや日本の円の切り上げしかないと思っています。私はそのような圧力が近い内に掛かかり、中国もおそらくこれを受け入れざるを得ないと踏んでいます。従って、中国投資は仮に株価が下がっても元で儲けることが出来ると考えています。

そのような中で、次の時代を模索するような不安定な相場展開がおそらく当面続くと思います。このサブプライムローン問題は、基本的には住宅価格が底打ちするまで解決しない問題であり、おそらく不良債権の問題は今後もしばらく続いていくと思います。なぜなら、現状はサブプライムローン関連の商品の半分ぐらいしか不良債権化していないからであります。即ち変動金利型の金融商品であるサブプライムローンは、最初の約2年間は非常に安い優遇金利が設定されており、その間は返済に窮することはありませんが、その優遇金利が終わったところで不良債権化していくという形になっています。現状は全サブプライムローン関連の商品のおよそ半分が優遇金利を終え変動金利になったところでネガティブ・エクイティ(住宅価格が下がり、住宅価格からローン残高を引いた住宅所有者の持ち分がマイナスになること)になり、住宅所有者は返済しないで、不良債権化しその住宅は銀行のものとなっています。優遇金利のものがまだ半分残っているのですから、順次それが不良債権化していくので今後も土地や住宅価格の低落は当面続くものと思われます。あと1年から2年は、この問題は終わらないと思いますし、今回の最大7000億ドルでの不良債権処理も、それを考えると十分な措置とは言えないと考えています。

しかし、今回この法案が議会を通過することにより、ある意味で納税者のお金が、1989年に設立された整理信託公社(RTC)のような仕組みを用いて使われることが法的に可能となった点が重要であります。おそらく米国はこれからも積極的にこのような不良債権の買い入れを推し進めていくことが必要となるでしょう。なぜなら、バーナンキ流の金融政策は今まで見ていて分かるように、ほとんど効果が無かったからであります。ブッシュ政権は減税政策を実施しましたが、減税された分が貯蓄に回り、消費に回らないとすれば、その効果は非常に薄いと考えられます。やはり公共投資を中心とした積極財政こそが、有効需要を増加させ、景気を立て直していくことになると考えています。従って、全体の景気回復につながる財政政策、とりわけ公共投資が必要でしょう。

そして、米国の全銀行8,533(2007年12月末時点)行のうち、これから破綻する中小銀行がまだまだ出てくると思います。それを今回のようなRTC型の救済方法だけでなく、かつて大恐慌の後にルーズベルト大統領により行われた復興金融公社(RFC)型の直接的な資本注入のようなことも、ある程度して行かざるを得ないと考えています。これまでキャピタル・クランチに陥った大手金融機関を資本注入により助けてきましたが、中小の多くある銀行にも資本注入する必要があると思います。それと同時に積極財政政策を行うことによって、何とか米国経済が持ち直す可能性が出てくるのではないかと思っています。

以上世界経済が現状抱えている問題は、非常に難しい問題ではありますが、今後パックス・アメリカーナは終焉の方向に向かって行き、これからは中国を中心に日本も含めたアジアも一つの極となり、EUと米国も極となるような3極体制になっていくと思います。従って、国際通貨制度については、多数の通貨によるバスケットとなり、このような通貨を入れたバスケットになっていくのではないかと思っています。いわゆるブレトンウッズ体制は完全に崩壊するのです。




 

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