北尾吉孝日記

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世界経済が今後どのように推移していくのかについては、以前申し上げた通り、実体経済としては2010年の中頃ぐらいまで底が見えない状況が続くと思っています。アメリカの住宅不動産価格は2006年6月から2008年7月までにおよそ21%下がっておりますが、今まで上がり過ぎていたわけですから、まだたった21%の下落と考えるべきだと思います。この大幅に上振れていた部分がいわゆるノーマルな軌道に戻るまでには、まだ20%~40%ぐらいは下落する可能性があると思っています。そして、それが正常化してくるのがおそらく2010年の中頃ぐらいだと思いますので、日米欧は少なくともその辺まではマイナス成長が続く可能性があると考えています。従って、その辺までは資源に対して大きな需要は意外と出てこないと思っています。

中国は成長率が若干落ち、2010年までは8~9%程度での経済成長を続ける可能性があります。ただ一つ考えなければいけないことは2010年に上海万博がありますので、それによる内需拡大で経済成長が高まってくる可能性があるということです。また今度の57兆円規模の景気刺激策を講ずることにより内需が拡大されてくる可能性がありますが、少なくとも日米欧に対する輸出は下落していかざるを得ないと思っています。従って、原油に対する需要を中心として、資源に対する需要はその辺まではさほど強くならないと考えています。

しかし、現在に至るまで世界各国は大盤振舞いの経済浮揚対策を講じておりますので、世界中である意味での過剰流動性を作り上げていることになっています。従って、2010年の中頃以降、この過剰流動性がインフレーションを誘発するという、その後のステージへと向かうことはほぼ間違いないと思っています。私はその時に急激に資源物価とりわけ原油が上がる可能性があると考えています。原油については先日IEA(国際エネルギー機関)が「2030年に1バレル200ドルを突破する」と予測していましたが、私はそれを必ずしも否定しません。各国の一人当たり消費量割合(2004年)を見ますと、日本は中国に対して8倍ぐらい、米国は中国に対して10倍ぐらいの原油を消費しています。これがもし現在の日本の消費量と同水準になるとしますと、おそらく現在の米国の消費量の3倍以上が中国一国で消費されるという計算になります。そのようなことを考えますと、「2030年に1バレル200ドルを突破する」との予測も、現実味を帯びてくると思っています。

さて、少し余談になりますが、前回の私の日記について「輸出産業を攻撃している。」と言う方がいらっしゃいますが、そのような意味で必ずしも言っている訳ではありません。少し数字を見ますと、1990年代の日本の輸出依存度は対名目GDP比で平均10%程度と、米国のそれを僅かに上回る程度です。しかし、それが2000年代に入り大きく増加して、2007年度の輸出依存度は約18%に上昇しました。また、2002年~2007年の日本の実質経済成長率は平均で1.95%でしたが、その中で輸出の寄与度は1.28%と非常に高い状況でありました。なぜ2007年度の輸出依存度が18%近くに増加したのかと言えば、それは取りも直さず超低金利政策を敷いたことによります。

長期に渡る超低金利政策を採ることで円のレベルを不当に安くし輸出企業を優遇し、その結果としてGDPの約60%を占める個人消費は全くと言って良いほど伸びませんでした。結果としてGDPもほとんど伸びなかったため『失われた10年』は20年になろうとしています。例えば約1500兆円の個人金融資産の約50%が現預金だとしますと、1%金利が上昇すれば国民には数兆円が返ってくることになります。それが消費に回ることを考えますと、この超低金利政策が本当に妥当な政策であったのかということを、私は今改めて問い直したいと思っています。

このようなことを考慮した上で国民経済的に全体としてどうすべきかと考えますと、全て正常な状況に戻すべきである、ということが私の基本的なスタンスです。今は世界的に金利を下げようという局面ですが、日本は実質的に下げる余地がないという状況まで下げてきました。また、為替水準は実質実効レートで見れば、プラザ合意の頃と同程度の円安水準に長期間維持されてきました。従って、そのような意味では円安修正に他ならないという認識を我々は持たなければいけないと思っています。

私も日記においては頭の中にある様々な統計データを参照しながら、きちんとした数字に基づいて私なりの意見を表明しているつもりではありますが、その意見全般についてブログでは詳細に申し上げることが出来ません。輸出依存度が日本経済の中で増えたと言ってもたかが2割弱であり、尚且つ輸出依存度が高まった理由は超低金利政策の下、本来金利の正常化をすれば利子所得として発生し個人消費につながったかもしれないということで様々な犠牲の上で為されていることを我々は銘記すべきであると思います。




 

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