北尾吉孝日記

『時局を洞察する』

2008年11月21日 9:50
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株式会社経済界よりこのSBIマネーワールドで書いている私の日記を出版させて欲しいという強い依頼が来て、私が書籍化に時間を費やさないならば、という条件付でOKし8月末に『時局を洞察する』というタイトルで出版されました。今回の世界的な景気の低迷が起こってつくづく時局を洞察するということの重要性をひしひしと感じています。

私自身は今年の正月に年賀式において、新たな成長に向けた組織の再編成(剪定)の必要性を説きました。また2月25日の日記にもこのようなことを載せました。

『~当面の経営環境を洞察し、組織の剪定を断行します。グループ各事業、各プロジェクトの優先順位を明確にし、経営資源の傾斜的配分を行います。やはり、時に剪定したり、間引いたり、省いたりして、新しい生命力が創造される環境を整備することが必要なのです。~』(2008年1月4日SBIグループ年賀式において)

『~今のSBIグループは全ての会社が相互にシナジーを生むように作り上げてきましたが、そのシナジーを更に効果的に発揮するためのグループ再編成ということが今年の大きなポイントになるのです。~』(2008年2月25日「SBIマネーワールド」より抜粋)

年頭になぜこのようなことを述べたのかと言えば、それは私なりに去年7月頃からサブプライムローンのことが気にかかり、これはもしかしたら大問題になるかもしれないと漠然と思い始めたことによります。それから去年8月の「パリバショック」を受けて必ず大きなことになると確信し、私どもも相当早いタイミングで色々な対策を講じなければいけないと漠とした不安感を持ったわけです。

そうした不安感は、世界全体の金融資産の伸びと世界全体のGDPの伸びを比較した場合、GDPをはるかに上回るような金融資産の成長が起こっていたといった統計的事実を見て確信になっていったのです。80年代には世界のGDPと同程度であった世界の金融資産合計は、90年以降増加ペースを早めたのです。結果として世界金融資産残高の対世界名目GDP比は1980年109でしたが、それが漸増して2006年には346にもなっていました。だからどこかでこの世界的バブルが破裂すると考えていました。そして「パリバショック」が起こった時に必ず大問題になると確信し、その結果としてこのようなことを年頭に言いました。

組織の剪定作業を進める中で、特に重要視したことは幾つかありました。一つ目は55.8%しか持っていなかった我がグループ最大のキャッシュカウ(キャッシュを生み出すところ)、SBIイー・トレード証券株式会社(現株式会社SBI証券)を完全子会社化すること。二つ目は住信SBIネット銀行株式会社の早期黒字化に向けて、運用に関する仕組みを猛スピードで作り上げるということ。それから三つ目は当社の投資先である韓国教保生命保険株式会社の全株式を売却すること(2007年2月27日:株式取得完了、2007年9月27日:株式譲渡完了)。そして、四つ目は同じく韓国のE*Trade Korea Co.,Ltd.(以下、E*Trade Korea)の全株式を売却すること(2004年6月17日:株式取得完了、2008年9月29日:株式譲渡完了)。これはアジア圏もこのバブル破裂の騒動に巻き込まれる可能性が高いと考えて、1997年のアジア通貨危機の記憶から早急に売却した方が良いと感じたからです。アジア通貨危機の時、韓国は非常に大きな痛手を被り、IMFからの支援を仰がなければならなくなりました。当時は下がり方が大変強烈であったと共に、意外とリバウンドも早かったと記憶しておりますので、現在新たなファンドを作って韓国への投資を行おうとしています。

このように様々な剪定作業をすると共に組織の再編成を行い、優先順位をつけて経営環境を整備してきました。不況に差し掛かっているということを予め感ずるということ。これが時局を洞察する、あるいは時務を識るということだと思いますが、これはやはり決定的に重要であったと思っています。例えば、今になって慌ててE*Trade Koreaを売却しようとしても現在の株価は4,355ウォンであり(11月20日現在。私どもの譲渡金額は1株あたり22,000ウォン)、ウォンもまた大幅に暴落しているという状況です。また、先ほどの一連の流れの中で為替は円高に振れるだろうと予測し、世界の株式市場も非常に悪いだろうと考えていましたので、次々とファンドは組成していますが、まだ投資は実行するなと指示しています。円高の御陰でドルベースでコミットした投資金額は円ベースでかなり減るので助かります。そのようなことを考えますと、ラッキーと言えばラッキーですが、やはり時局を読んで対策を講じていくことが非常に大事であると思っています。




 

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