北尾吉孝日記

この記事をシェアする

米国のブッシュ政権はパックスアメリカーナの終焉を方向付けることとなったのではないでしょうか。ある意味で米国の良き時代の最後の政権ではないかと思います。バラク・オバマ氏がチェンジを訴えて次期大統領に選ばれましたが、今後最もチェンジすることは米国のグローバルでの位置づけだろうと思います。それは即ち1944年のブレトンウッズ協定に基づいた米ドルを基軸通貨とした体制の終焉に向けた序章が始まったということです。そのような意味での大きなチェンジが今起こりつつあると考えています。チェンジを掲げて米国史上初めての黒人大統領に選ばれたオバマ氏には今後大統領として、どのようにこのことと向きあうのか興味があります。

ブッシュ政権ではっきりしたことは二つあります。一つは米国の軍事力の限界です。米国の軍事力はイラクでもアフガニスタンでも未だ戦争を終えることが出来ない程度のものだということです。そして、今や核は拡散し、北朝鮮ですら核を保持していますが、ある意味で核拡散により戦争抑止力が高められているという状況です。昔は対立する米国とソ連が互いに核を保有することにより戦争抑止力となりました。多くの国が核を保有することにより均衡が保たれているような現代では、もはや軍事力がそれほど大きな意味を持たない時代なのかもしれません。どこかの国が核を使用すれば地球の破滅につながりかねませんから。

そしてもう一つは米国の経済力がドル基軸通貨体制を維持できなくなったことです。2008年はそれを象徴する年になりました。契機はもちろんサブプライムローン問題ですが、根底にある根本的な原因はニクソンによる1971年の金ドル兌換停止であると考えています。即ち金の裏付け無しに輪転機を回せば幾らでもドルが刷れるというパックスアメリカーナの一つの象徴が崩れ始めて来ているということです。

おそらく今後は世界経済全体の貿易量の増大に対応するように通貨の量を増やし、基軸通貨としては、複数の通貨によるバスケット方式制に徐々に転換して行かざるを得ないのではないかと思います。ニクソンショック以前は金との兌換が歯止めとなり、金との兌換をする以上、ドルに対する金の価値を上げるか埋蔵している金を採掘しない限りは、通貨の量を増やすわけにはいきませんでした。これからは世界の貿易量を見ながら、実物経済と金融資産残高が増えていくペースを同程度にするようなコントロールをIMFなどが行うことで、今回のような金融資産の過度な膨張を抑えていくようにすべきでしょう。今回はレバレッジを効かせたデリバティブのような金融資産の過度な膨張の吸収を可能にする新しい金融商品が次々と開発されたことにより、結果として巨大な世界的バブルが各国の政策担当者が気づかないうちに生まれてしまいました。しかし、バブルは必ずどこかで崩壊します。このように捉えることが長い歴史の中での正しい捉え方ではないかと思います。

次の世紀はおそらく中国の世紀となる気がしてなりません。「北尾さんは中国を買いかぶり過ぎではないか」と指摘される方もいますが、私はそうは考えていません。中国の抱えている様々な問題について、私なりにかなり勉強してきたつもりですが、それらは総じてそれほど大きな問題ではないと思っています。

例えば一党独裁の問題ですが、ソ連も一党独裁でありましたが約70年という歳月を経て、共産主義は崩壊しました。別に大きな流血でそれを奪い取ったわけではないですし、大戦争や内乱によるものでは必ずしもありません。それは私の恩師の故気賀健三という経済政策の教授が言っておられるように、まさに「共産主義とは資本主義から資本主義に至る苦難の歴史である」と位置付けられる状況であったと言えると思います。中国においても長い歴史の中で見れば、やはり基本的には資本主義体制に移行すると思います。今でもある意味で混合経済体制でありますが、一党独裁体制も自然と崩壊して多党化していくと思います。またチベット等の少数民族問題についても、その部分がチェンジすれば、何れはその問題も改善していくだろうと思います。

やはりこれだけ世界の情報が中国に入るようになりましたので、時間の問題で様々な点で大きく変わらざるを得ないと思っています。あのソ連の崩壊もある意味で西洋の情報が大量に流入したことが原因であります。例えば写真から如何に西洋が繁栄しているのかを知り、あるいはコピーの機械が東欧でも流通されるようになり、西欧の情報がコピーされて流出するということが起こりました。現在はインターネットも高度に発展していますので、そのような情報を隠すことが大変難しく、最終的にはソ連のような崩壊の道へと繋がっていくと思います。従って、現在の中国の問題点はそれほど大きな問題であるとは思っていません。

パックスブリタニカが第二次世界大戦の終結とともに終わり、パックスアメリカーナも終焉の方向に向かっていますが、その次は誰が世界の覇権を取るのでしょうか。それはくどいようですが中国であると私は思います。従いまして、私どもSBIグループが今後中国に対してどのような視点を持って仕事を進めて行くのかということが非常に大事になると思っています。

およそ革命を起こすとすれば、そこには一つの歴史観と理論的支柱がなければなりません。それは例えば毛沢東の革命で言えば、彼は中国古典を猛烈に勉強することで歴史観を身に着け、一方で理論的支柱をマルクスレーニン主義から学びました。このようなことにより革命が成功裏になされたと思います。

それと同様に、私は一つの見方として大きな歴史観を持って、今世界中で起こっていることを一つずつ見て行くことが非常に大事ではないかと思っています。そうすることで次の時代がどのようなものであるかということを洞察できます。私どもSBIグループが次の時代に飛躍するためには世界がどのような潮流で動いて行くのかについて、いち早く察知しなければいけません。私自身もそのようなことを心掛け、次の一手を模索していきたいと思います。




 

(任意/公開)
(任意/非公開)



Copyright © SBI Holdings, inc. All rights reserved.