北尾吉孝日記

『日立低迷の諸要因』

2009年10月9日 11:13
この記事をシェアする


最近私は幾つかの会社に注目していますが、その一つが株式会社日立製作所(以下、日立)です。日立は2009年3月期の連結決算で、製造業で戦後最大となる約7873億円の最終赤字を計上しました。私は日立が今後どうなって行くのかに大変興味を持って新聞や雑誌に書かれている記事を眺めています。私は野村證券株式会社(以下、野村證券)に勤務していた時に日立を担当していたことがありますが、当時の宮内副社長は「今、大体30万人の社員がいます。その社員の家族が4人いれば、人口の1%が日立に関連していることになるんですよ」と私に話していましたが、嘗てはそのぐらい大きな力を持つ会社でした。しかし、その後業績は下落傾向を続けることになりましたが、その退潮は時代の流れではないかという感もしています(画像参照)。

日立には昔から優秀な方が多く入社していましたし、これまで再生の任に当たって来た経営者も大変優秀な方であったと思いますが、なぜ日立はこれ程までに低迷して行ったのでしょうか。その要因は幾つか考えられると思いますが、まずは一つ目として、組織の官僚化の弊害、つまり大企業病が挙げられると思います。二つ目として、これも大企業病の一種ですが所謂セクショナリズムに陥ったことで、成長が見込まれるセクションに然るべき人材と資本の投入がなされていなかった可能性が考えられます。それから三つ目として、経営を多角化し過ぎたことで、トップが的確な舵取りを行える程に会社全体を十分に把握しきれていなかったことがあると思われます。そして四つ目として、日立は昔から基礎研究を非常に重んじる会社ではありますが、売り上げを伸ばすことに貢献する製品をどのようにして作るのかという部分に対する取り組みが非常に遅れていたのではないかと思っています。
最後に五つ目として、インターネットの世界に対する取り組みの遅れが挙げられると思います。嘗て私が日立担当者であった時代に、株式会社野村総合研究所の力も借りて大プレゼンテーションをしたことがあります。そのプレゼンテーションで当時のメインフレーム・コンピュータ部門の担当である副社長以下に、メインフレームの世界からPCの世界に軌道転換するべきであるという趣旨の提案を行いました。その時に言われたことは「いや~北尾さんね、PCでは飯が食えんのです」ということでした。しかしその一方でIBMは見事にPCの世界への軌道転換を成し遂げていたのです。

私は上記の五つの複合的な要因が日立の今日をもたらしたと思いますが、とりわけ、この五つ目にあげたようなことが今日までの日立低迷の最大原因ではないかと考えています。つまり世の中の流れとしてコンピューターの世界はダウンサイジング化して行くにも拘らず、過去の成功体験に拘泥してそれに対応出来ない会社の状態、そのような「時代の流れに対応できない会社の状態」が様々な部分で今日まで続いて来たことこそが、低迷の根本的な要因となっているのではないかと思っています。

日立を例にどのように巨大企業が衰退の道を歩んで行くのかを見てきましたが、一般的にはこれらの中で最初に指摘した大企業病のケースと二番目に指摘したセクショナリズムのケースが最もよくあるケースだと思います。所詮組織というものは巨大化して来れば、やはりどうしてもこのような弊害が生まれてくるものです。そのような巨大企業において、全社的に大きく舵取りをして行けるだけの経営者が中々出て来ないことに日本企業の大きな課題があると思っています。例えば米国においては、ある日突然大企業のトップに嘗てのライバル企業のトップが就任したり、あるいは違う世界のトップが突如トップに就任することで経営の革新が行われ、結果として成功を収めるケースが数多くあります。このようなことがIBMやYahoo!Inc.等では起こりましたが、未だに日本の巨大企業では起こり得ないというのが現実かと思います。やはりそのようなことが今後は必要になって来るのではないかと私は思ったりもしています。何れにしましても日本を代表する巨大企業である日立という会社が再生されるのか否か、また再生される場合どのように再生されるのか、今後もそのような視点から日立という会社をウォッチして行きたいと思っています。




 

(任意/公開)
(任意/非公開)



Copyright © SBI Holdings, inc. All rights reserved.