北尾吉孝日記

『日米企業業績の私の見方』

2009年10月23日 12:49
この記事をシェアする

ゴールドマン・サックスやJPモルガン・チェース等、米国大手金融機関の市場予想を上回る決算が次々と発表されていますが、米国中小金融機関の業績については日本では殆ど報道されていません。本来米国の金融機関の状況をより正確に認識しようとするならば、やはりそのような末端の中小金融機関の業績についても詳しく理解する必要性があると思います。例えば昨年11月の日記でも書きましたが(『株式・為替市場の動向と今後の見通し』)、変動金利型の金融商品であるサブプライムローンは、通常最初の約2年間は非常に安い優遇金利が設定されており、その間は返済に窮することはありません。しかし、住宅価格がその間大幅に下落し、その優遇金利が終わったところでノンリコースローンを借りている住宅所有者は返済せずに家から退去してしまい、結果その住宅は銀行のものとなって不良債権化していくという形になっています。つまり中小金融機関においてもそのような不良債権が増加していく状況は未だ収束していませんので、私はそれらの業績、特に中小コマーシャルバンクの業績については依然として相当厳しい状況であろうと思っています。

米国インターネット関連企業の業績について言えば、その全企業において業績が上向いているとは未だ言えない状況であると思っています。例えばヤフーについて言えば、今回好業績であったかのように見えますが、主力のネット広告事業はやはりグーグルに押され非常に厳しい状況にあることが分かります。米国全体の景気が下落していることもあり、米国のネット広告市場全体の市場規模は縮小傾向にありますが(※1)、その中でヤフーが大幅増益となったのは、アリババ・ドット・コムの株式売却益によるところが大きいと思っています。

また私はGMが今後どのようになって行くのかについて、非常に大きな関心を寄せています。GMは新会社として初の決算概要を11月中旬に発表する予定ですが、あまり期待することは出来ないのではないかと思っています。先日のGEの決算発表を見ますと金融部門の不振が足を引っ張る形になっていますが、これに見られるように「モノについてファイナンスしていく業種」には、まだまだ不良債権化したところの痛みが残っているというわけです。つまりGMにおいてもGEの状況と同じようになっていると思われ、その不良債権化したファイナンスの部分の痛みが足を引っ張って行くことになると考えられます。例えばゴールドマン・サックスが物凄く潤っているのは、そのようなモノについた金融で儲けているわけではなく、基本的にトレーディングで儲けていることによります。つまり世界中でマーケットが大幅上昇するような現局面において、上手く相場の綾を取りながら儲けているわけです。同じ金融という業種であっても、自動車についてファイナンスしていく方は米国の自動車市場が基本的に回復していないことに加え、不良債権化したところの痛みが残っているため、今後も厳しい状況が続くと思っています。従って、「新生GM」の業績についてもその意味で暫くは良くはならないと考えています。

日本企業の決算について言えば、例えば共に来週発表予定の株式会社東芝(※2)や本田技研工業株式会社(※3)は業績の急回復が報道されていますが、そのような政府の景気対策の影響をダイレクトに受けることが出来た業種、中でも上記に挙げた2社のような会社はかなりの程度潤っています。しかしながらその一方で、一部の米国大手金融機関が物凄く潤って末端の中小金融機関が未だ立ち直ることが出来ていないように、日本の場合も「特別な会社」の他は潤っていない会社が沢山あります。そのような状況において私は日本の地方銀行を含めた金融機関の収益力がどの程度回復しているのかについて、大変注目しています。

またマクロの経済を判断する上で、企業業績を見る時には常に半導体需要の動向など産業全体の指標となるようなところを見なければいけないと私は考えています。世界全体の半導体需要について言えば、エルピーダメモリ株式会社の連結決算速報や上記の東芝の報道を見ますと、やはり回復してきていると思われ、半導体という「産業のコメ」のようなところに回復の兆しが現れたことは、非常に良いことだと思っています。また業界の一部の会社だけを見て全体を推し量ることは不可能で、例えば先ほど述べた通り金融機関の場合で言えば、むしろ末端の中小金融機関を見る事によって景気全体の回復度合い等を推し量ることが可能になると私は考えています。皆さんも企業業績を見る時には、このような見方をされてみては如何でしょうか。

参考
※1:http://www.nikkei.co.jp/news/main/20091007AT2M0600K06102009.html
※2:http://www.nikkei.co.jp/news/main/20091022AT1D210D121102009.html
※3:http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20091022AT2D2101P21102009.html




 

(任意/公開)
(任意/非公開)



Copyright © SBI Holdings, inc. All rights reserved.