北尾吉孝日記

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先日「仕事があるときだけ雇用契約を結ぶ「登録型」や、製造業への派遣を原則として禁止する労働者派遣法改正案」が閣議決定されました

私自身は今回の改正について余り注目していたわけではありません。私どもも勿論派遣社員を一部採用してはいますが製造業ではありませんし、基本的に私どもの従業員についてはそもそもがプロフェッショナルを採用・養成しているということがあるからです。ただ改正案の中身については、私にとって理解し難い部分が幾つかあります。

労働者派遣法は小泉内閣の時に企業側の論理で改正され、企業はアルバイトや派遣、契約社員等いわゆる「非正規雇用」を大幅に増やして来たわけですが、そのことが今企業収益がV字型に回復したようになっている一因ではないかと考えています。つまり景気のUp and Downの調整に非正規雇用を用いることで、経済危機において多くの企業が簡単に正規雇用以外の労働者のクビを切ることが出来たということが大きいということです。

ところが今回の改正では逆に企業が簡単にクビを切れなくするということで、果たしてこれが本当に「派遣労働者の保護」ということに繋がるのか、そして、どのようにしてそのことに繋がるという議論をしているのか、私には良く分からない部分があります。また少なくとも企業の方はあのリーマンショック以後の世界経済の低迷というものを経験して、「従業員は極力減らさなければならない」とか、「より人件費の安い所に生産拠点を移さなければならない」という切迫した状況に既になっています。従って、そのような状況下での改正に一体どれ程の意味があるものか、私には良く分かりません。

今回の改正により「製造業派遣について、長期の雇用契約を結ぶ「常用型」を除いて禁止」するようですが、そうなりますと今度は「常用型」以外で派遣されてきた人の雇用形態がしっかりとそれに切り替わって行かなければ雇用は増えないことになります。ただ短期派遣労働者と長期派遣労働者の生産性に大きな差が無いような仕事であれば、企業側のアクションとしては直接雇用の期間従業員を増減させたり、あるいはグループ内での人員再配置で対応して行くと思われますので、政府が意図した結果には繋がって行かないのではないかと私は思っています。

また「仕事がある時だけ雇用する「登録型」派遣は、通訳・秘書などの専門業務を除いて原則禁止」のようですが、企業側からしてみれば尚の事、仕事がある時でも執拗な辛抱をして新規で雇わず残業増で対応するようになるかもしれませんし、あるいは出稼ぎで中国やブラジル等から日本に来ている労働者で代替していくようになる可能性があるでしょう。特に日本の場合、これだけの経済的な打撃を被った上、そもそもがデフレ状況で企業収益が大変圧迫されていますので、その中で企業としてコスト増に繋がるようなディシジョンメイキングはし難いというのが現状でしょう。だから今回法律が改正されたからと言って、それが「派遣労働者の保護」に繋がるとは到底考え難く、結果余計に仕事が無くなって行くということにならないかと私は懸念しています。

ではどのようにすれば良いのかと言えば、一例として米国のようにレイオフという形ではっきりして、景気が悪くなってクビを切られた人に対しては失業保険等々で補い、景気が良くなったら直ぐに雇用されるという形にする方がある意味良いのではないかと私は思っています。ただその辺のことについて考えますと、それは日本における雇用問題全体として様々な分野に包括的に着手しなければならず、非常に難しく、簡単に結論がでない問題だと私は思っています。




 

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