北尾吉孝日記

『ギリシャ問題の行方』

2010年5月7日 17:51
この記事をシェアする

昨日、ギリシャ議会は「ヨーロッパ各国から緊急融資をうける前提となる緊縮措置を伴う財政再建法案を可決しました」が、これにより国としてコミットメントしたことになりますので、私はある意味一つの大きな節目だと思っています。

現在のような状況になってしまった以上、ギリシャ国民には堪え忍んでもらうしかありませんが、残念ながらギリシャ国民は「政府の責任だ」「自分達は何も悪くない」という調子でゼネストを行う等、嘗て「欲しがりません勝つまでは」と日本人が辛抱したようにはなりません。これではGDPの7割を占める観光産業にも大きな打撃となりますので、ギリシャ経済は縮小して行かざるを得ません。
ただ以前ブログで述べた通り、政権交代後に初めて、前政権で発表されてきた経済統計がインチキであった事が明るみになり、GDP比で2008年の財政赤字が約2倍、2009年の財政赤字については約3.5倍にまで膨らんでしまうわけですから、ギリシャ国民が激怒することも分からないわけではありません。従って、タイでも話題になっているような国内大動乱が延々と続くということも起こりかねず、そのような状況になってくれば、上述した「財政再建法案」の実施が非常に困難なものとなるでしょう。

この「ギリシャ問題」というものは、資金繰り支援により決着を図れるのではないかというように当初言われていましたが、中々決着がつきません。その理由の一つに上述したようなギリシャ国民の抗議行動がありますが、それに併せて幾つかの問題があると思っています。まず、ギリシャ国債が格下げされて価格が暴落して行くという状況になり、それを買っていた欧米の様々な金融機関がロスを計上するということがあります。それから公的債務隠しに加担したゴールドマン・サックスを含む15行の金融機関や格付け機関に関して、「前政権の嘘を見破れなかったのか」「前政権と組んでいたのではないか」というように、その責任が追求されて行く可能性があるという問題もあります。更に所謂「PIGS」諸国に関して、ギリシャから飛び火してスペインも危機的状況になるのではないかという噂もあります。ただ私はそこまでは行かないと思っていますし、スペインに行くとすればその前にポルトガルがおかしくなると考えています。
何れにせよ、先の経済危機におけるCDO(Collateralized Debt Obligation)のように、サブプライムローンが世界の金融機関にどれだけ組み込まれているのかということと同じような現象が現在起こっているわけで、今回の問題が一つの大きな国際金融システムの問題に繋がらなければ良いと思っています。

今回の問題を通してユーロという通貨について言えば、一方でドイツやフランスのような国があるかと思えば、片一方でギリシャやポルトガル、あるいは東欧諸国があるという中で、メンバー間の経済格差というものが厳然として存在しており、ユーロ全体の信認の低下を促して行くという状況にあるということです。つまり、創設後10年以上を経過したユーロ自体の脆弱性というものが今回もやはり露呈したわけで、このことは基軸通貨となることが極めて難しいということを示唆していると言えるでしょう。これまではドルが相対的に弱くなる中でユーロの地位は上がっていたわけですが、ジョージ・ソロスが「ユーロ崩壊」の可能性について言及していたように、1ユーロ=1.2ドルというような方向に何か動きつつあるような気がしています。

このような世界情勢において、私は人民元がまともな国際通貨として一刻も早く登場してくることを待望していますが、そのためには幾つか克服しなければならない問題があると思っています。まず一つ目として、国際間の資本移動の自由を中国政府は認めなくてはなりません。それから現在のコントロールしたような変動相場制ではなく、完全変動相場制に移行しなければならないということです。中国はこれらに対して相当な抵抗があるだろうと思いますが、国際金融センターとしての位置付けを中国が本当に期待するのであれば、これらを早急に具現化して行かなければなりません。更に三つ目として資本市場の厚みを確りと形成して行かなければなりません。その為には国内金利の自由化がなされなければなりません。日本も債券市場等は極めてお粗末ですが、中国の資本市場はそれよりも更に大きく劣っていますので、今後様々な資本市場についてその厚みを増して行かなければなりません。
このように元が国際通貨となるためには、克服しなければならない問題が幾つもありますので、その実現にはまだまだ時間が掛かるでしょう。そうなりますと、中国はやはりドルに依存するような体制を敷くということになりますが、一方でドルに対する危機意識というものも常に持っていて、今回のようにユーロが不安定になるとその意識は余計に助長されるということです。

現在、ギリシャに端を発した一種のソブリンリスクと特にユーロを中心とした金融システムの脆弱性というものが露呈してはいますが、経済のファンダメンタルズが世界的に全て改善していることは間違いないことだと思いますし、やはりあの「リーマンショック」の時のような状況に米国がない以上、欧州経済の規模を考えますと、それ程大きな問題になることはないと私は思っています。但しTwitterで呟いた通り、ECBの今後の対応次第という部分はありますが。




 

(任意/公開)
(任意/非公開)

  • 小
  • 中
  • 大



Copyright © SBI Holdings, inc. All rights reserved.