北尾吉孝日記

『今問われる検察の倫理』

2010年9月22日 17:08
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「障害者団体向け郵便料金割引制度の悪用事件」に関する一連のニュースを見ていますと、本当に腹立たしく、兎に角許し難いことであると感じています。
元厚生労働省局長の村木厚子さんという真面目に仕事をしてきた人間に冤罪を掛け、長期に亘り職場から遠ざけ、そして大変な思いをさせたという今回の事件は氷山の一角であると思われます。
検察は今回の大不祥事について徹底的に究明することは勿論、同じようなことが無いかどうかを克明に調べ上げると共に、検察庁という組織全体を綱紀粛正してゼロから再出発して行くということでなければならないと思っています。

今回事件を捏ち上げた前田恒彦容疑者は「特捜のエース」と呼ばれていたそうですが、人を裁く立場にある者が押収資料を改竄して裁いているということが明るみになり、検察の威信というものはもはや地に落ちてしまいました。
今回のようなことが起こる検察の風土として、その一つに大きな事件に取り組んで何か手柄を挙げれば、その人物が高い評価を受けるというようなものがあるかと思いますが、そもそもその根本の所が間違っているということです。
悪を見つけ裁いて行くことは本来事件の大小に関係無いことであり、それが公正になされていれば、評価されるべきです。今後組織・人事改正を行う中で検察官の評価について根本的に見直して行くべきであると私は思います。

また医の倫理ということはよく言われますが、医者だけではなく、巨大な権力を掌握する検察官や警察官等々についても、どのような倫理観を持って職を全うすべきかという司法の倫理が今正に問われるべきです。
その倫理の部分が乱れているからこそ今回のような失態を演じることになったわけで、司法に携わる者はその部分について抜本的に改めて行かなければならないと私は思っています。
そのような意味では医者や検察官と同じように、金融の世界で働く者の倫理観についても他業種と比してより高いものが要求されると私は考えています。
それ故、私はSBIホールディングス株式会社の経営理念の第一に『正しい倫理的価値観を持つ(「法律に触れないか」、「儲かるか」ではなく、それをすることが社会正義に照らして正しいかどうかを判断基準として事業を行う)』ということを掲げているわけです。
それは金融という金を預かる商売にある者が、金の世界における様々な誘惑に負けるようなことがあってはならないという思いからで、医、司法、金融には非常に高い倫理的価値観が求められているのです。

近年の検察を見ていて思うことは、如何にいい加減な捜査がなされてきたかという部分があります。
例えば、「足利事件」の菅家利和さんの冤罪というものも正に検察の致命的なミスであり、やはり誘導尋問のように被疑者を追い詰めて行くその取調べについては全面的に見直し、今後はその全過程を公開すべきではないかと私は考えています。
また本件は証拠としては不十分と言わざるを得ない時分のDNA鑑定により一人の人間の自由をあれだけの期間に亘り奪ったという許し難い事件ですが、確実な物的証拠も無しに状況証拠だけで有罪にするというようなことや、あるいは正に鬼の首を取ったかのようにこれでもかと報道される中で世論が一人の人間を有罪にして行くということはあってはならないと私は強く思います。

後者の世論ということで言えば、例えば「陸山会事件」に絡み小沢さんは4度の事情聴取を受け、その上で3度目の不起訴処分が下されると言われているにも拘らず、いつまでも犯罪人のように扱われるという意味では、やはりマスコミの問題もあると思っています。
今回の村木さんに関するこれまでの報道を思い返してみますと、「村木は確実に犯人である」というような扱い方が支配的でありましたが、そのようなことであってはいけないと思います。
国民の一般的世論というものは、裁判で有罪に出来るか否かというようなギリギリの所で判断しているわけではなく、寧ろ「彼らは共謀していたに違いない」というマスコミ的推論に拠るものでしかありませんので、ある意味非常に危険なものであるという認識を持つべきだと私は思います。

昔から法を貫く精神というものは推定無罪で、疑わしきを罰して行こうとすれば、どれだけの冤罪者が出て、どれだけの人が無駄死にするかを考えなくてはなりません。
人が人を裁く以上、その精神を貫徹するということでなければ、仕方がありません。
今回の事件を通して、私は推定無罪ということを強く認識すべきと改めて思いましたし、それこそが民主主義の一つの在り方であるということです。
日本人は簡単なことで一人の人間を終生その世から、あるいはその世界から抹殺するような仕打ちをするというようなことがあると私は考えています。
これについて欧米では決してそうでもなく、例えば女性問題について言えば、ビル・クリントンさんは大統領という職責にありながら、「モニカ・ルインスキー事件」等々のスキャンダルを経ても大統領職を続けていましたし、あるいはサルコジ大統領についても「夫婦不仲説」や「不倫説」があってもその職を続けていく上で問題にはなりません。
瞬く間に犯罪人を作り上げる検察、画一的で乱暴な報道を行うマスコミと共に、上述したような日本人の在り方についても今こそ一考が必要ではないかと私は思っています。





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  1. 北尾様
      御許に

     少し前に書かれたツイッターと、日記の内容を拝読させていただきまして、とても勉強になりました。ありがとうございました。

     大愚な私は、実は、一般的な組織対応として、マスコミでは現在騒がれていない「法的な対応」も気になっております。

     つまり、罪名からは、公務員の犯罪(虚偽公文書作成罪・同行使罪)となっております。
     ということは、公務員が発行したことを明らかに示す「公文書」があったのではないかと思うからです。
     この罪名を過って逮捕するほど、地検は愚かではないと思いますが・・・。
     但しこの罪名は、犯意が故意であることが立件用件です。
     ですから過失では、立件されることはありません。
     そこで、主務官庁の間違いの違法行為を誰がどのように取り締まり是正するのかというと、行政罰に当たる罰則規定が問題となると思います。
     さらに、それも過失規定が定められた条文に無い場合には、行政行為の過ちに対して、誰がどのように対応するのかということになるかと存じます。
     つまり、『行政審判』上の課題が残されてはいないのでしょうか?
     換言すれば、証明書の発行経緯に於ける行政瑕疵の有無とそれの対応を、行政審判で再検討しなくて良いのでしょうか?

     ただ、主務官庁が訴訟を受ける場合、実害を受けた被害者が特定され、その人が訴えを起こさない限り、これを誰がどのように行うのでしょうか?
     つまり、様態としては、もしかしたら、行政瑕疵により、不適切な利用利益を発生させたのかもしれないのです。
     しかも郵便局側にもミスがあったのかもしれませんから、郵便局自体の確認不十分な不当な割引により、実害を受けたことを、郵便局が主務官庁を相手どって、訴訟の主張をしにくいのかもしれません。
     なんせ、法益を巡る権利者並びに義務者は、同時に、法の下での公正さや法益を構成するビジネス行為の当時者ですから。

     それでは事件発覚の発端に戻りますと、今回、優遇割引制度の不適切な利用により発生した損失を、誰がどのように負担するのか、そもそもその損失は、容認されるべき範囲なのか等々収入勘定の問題から、今回の検察対応になったのかと推測されます。

     しかもこの種のことは、結構多いように思います。
     ですから、政権交代直前に国会に提出されていた行政不服審査法の改正案(行政瑕疵への第三者機関設置対応)が提出されていたのですが、せっかくの改正案も、政権争いの中で、検討もされずに、廃案となりました。これにより、納税者の実害も、実は放置されました。救済の無い不利益
    への対応や、増額し過ぎた国家賠償請求への対応が、問題となっていた矢先でしたから。
     せめて、納税者や国民の実害にかかる行政瑕疵は、引き続き是正していただきたいものです。

     それでも、私は、単に犯人探しや、杓子定規的な対応を希望しているわけでもありません。
     物事の説明の順番として、しかも、法的手続きの順番として、容易に想像され得ることを想起したに過ぎません。

     誰がどのように儲けたとしても、その儲け方が必ずしも明らかにされないこともありますが、これだけ明るみに出た事件の場合には、この事件に関しては
    行政瑕疵への対応までも含めて説明をした方が、「ことの経緯が判りやすい、或いは、そのような方法では、同様の利益を得ることができないことを、他の第三者が理解して、同じ収益の方法を反復または利用することには、諦めがつくかもしれない等々」を含め、法益の具体的な形成方法を理解し、協力する人が多くなるかもしれないと思いました。

     只、私には、このような思考の刺激を受ける機会でもなければ、単に遵法してきたものが多いだけに、振り返ると損ばかり・・・???

     このような既に明らかな制約や制限は、やはり遵法行為が経済効率上、最も良かろうと思っています。
     短い人生、盾をつく暇があったら、もっと別の稼ぎ方を見つけることに勢力を費やさないと、愚かな私には、絶対的な時間が足りませんから、可能なところで頑張ります。

     ご多用中、お邪魔申し上げましたこと、お詫び申し上げますと共に、今後も、御twitter、楽しみに拝読させていただきます。



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