北尾吉孝日記

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今の日本経済の論点については幾つかあると思っていますが、最大の論点というものは「如何にデフレから脱却するのか」であると私は考えています。
多くの識者や政策当局者が「デフレからの脱却」を訴えてはいますが、現在に至るまで一向に脱却出来ていません。

そもそもデフレという現象がどのようなものか、そしてまたデフレが一体何によって生まれてくるのかについては、昨年末に書いた『デフレの怖さ』というタイトルのブログで述べた通りですので、下記抜粋してご紹介します。

【デフレという現象は「消費者物価などの一般物価が持続的に下落を続ける現象」のことで、「物価が下がることは大いに結構」と思われるかもしれませんが、デフレの怖さとは「所得が下がっていく」ということです。つまり一般の個々人の年収が下がっていく、大きく言えば国民所得水準が低下していくということです。名目賃金は下方硬直性があると言われていますが、年収に占めるボーナス等の特別給与のウェイトが大きく年収としては下がっています。また製品や商品の価格が低下すると、通常企業収益が圧迫され、これを通じて企業の設備投資やその他の支出が削減されマクロ経済にマイナスの影響を与えます。
ではこのようなデフレは一体何によって生まれてくるのでしょうか。それは所謂「需給ギャップ」と称される「需要と供給の差」、即ち需要が供給に満たない状況が続いているとデフレ状況に入るということです。】

日本の需給ギャップは「バブル崩壊後の1992年ごろから(07~08年ごろの一時期を除いて)ほぼ一貫してマイナス」であり、日本は戦後先進主要国の中で初めてデフレを経験し、これが持続して未だデフレから脱却出来ていない状況にあります。
先日内閣府が発表した2010年4-6月期の需給ギャップはマイナス4.5%(年換算で約25兆円の需要不足)であり、これで日本は数パーセントの需給ギャップマイナスが8四半期連続していることになります。
現在はデフレ経済下において個人消費が増えて行かず、企業の設備投資も低迷している中で円だけが強くなって行くという状況で、このマイナスは中々改善されて行きません。
諸悪の根源はデフレであり、デフレである以上あらゆることが悪くなってくるわけで、このデフレが齎す悪循環により正に日本経済は長期停滞に入っているような状況になっています。
従って、デフレから如何にして脱却するのかを日本の最優先課題として徹底的に取り組んで行かねばなりませんが、例えば昨今の「円高問題」について言えば、デフレを克服しない限り、ある意味円高修正が齎されることはないかもしれないと私は考えています。

これまで円高によるメリットが何かあったのかと言えば、通常であれば自国の製品を高く売って、他国の製品を安く買うというメリットがあるはずです。
しかしながら、産出物価指数を投入物価指数で除した「交易条件指数」と経済学的に言われるものの「製造業総合部門(単位:2000年=100)」を時系列で見ますと、大きく言えば2002年の100.68以降寧ろ低下傾向にあり、現水準の87.19は上記時点に対して約15%も低下しています(2000年基準の交易条件指数「製造業総合部門」の時系列データ)。
同時点の為替水準を数値的に見ますと、2002年の1ドル=125.28円に対して現水準は1ドル=90.17円と凡そ39%も円が強くなっており、先日のブログで述べた「実質実効為替レート指数(単位:2005年=100)」で見れば、2002年の103.01に対して現水準は99.70と僅か3%の円安水準でしかありません
2005年基準の実質実効為替レート指数及び東京市場ドル・円の時系列データ)。

上述したような為替状況下での交易条件の相対的な悪化度合が意味するものとして、その一つにメーカーの収益性の低下があります。
即ちメーカーが同程度の収益を上げて行こうとするならば、円高環境下においては通常販売価格(産出物価)を上げて行くはずですが、結局それを抑えた形での経営がなされているということで収益がどんどん圧迫されて行くわけです。
実際に産出物価指数の「製造業総合部門輸出品(単位:2000年=100)」を時系列で見れば、2002年の102.49に対して現水準は86.36と約19%も低下している一方で、同指数の「製造業総合部門国内品(単位:2000年=100)」を時系列で見ますと、2002年の96.53に対して現水準は105.94と逆に10%程度も上昇しているわけです(2000年基準の産出物価指数「製造業総合部門輸出品」「製造業総合部門国内品」の時系列データ)。
従って、上述した要因等により交易条件は悪化の一途を辿っているわけですが、これこそが今日本が抱える最大の問題であると私は認識しています。
まずはその現実を直視し、その状況を改善に向かわせるべく何をすべきかについて、政策当局者は早急に検討を開始しなくてはなりません。

またデフレを克服すべく「インフレターゲット論」を持ち出す論者も多数いますが、私もそれが一つのやり方であると認識しており、政府もある種のインフレを作り出すよう意図的に導いて行く施策を採って行くべきであると思います。
そして、当然のことながら政府だけではなく日銀も一緒になって適切なタイミングで財政金融政策を打ち出して行かねばなりませんし、やはり徹底的な金融の量的緩和を実施しなければ仕方がありません。
以前ブログで述べた通り、現在25兆円程度ある需給ギャップの解消に向けて、「実質的には有効需要になるという状況を作り出して行かなければなりませんので、そのためにはやはり根本的には産業を興して行くしかないと私は思っています」が、産業を創造するには膨大な時間を要します。
「新成長産業創造」や「成長産業育成」というようなことを論ずる識者は沢山いますが、まずはデフレを断ち切るということが先決で、その部分に焦点を合わせた政策を行うべきであると私は思います。
また施策の実施に当たっては、日本国債の約95%を日本国民が引き受けているということを考慮しますと、現下の経済状況においては一時的な財政悪化を気にする必要は殆ど無いと思われます。
これこそが経済政策遂行における最大のポイントであり、デフレ脱却を実現すべく積極的な政策運営を図って行くべきであるというように私は考えています。





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  1. その通りであります。
    今に日銀が大胆な量的緩和政策をなさないところに問題があります。

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