北尾吉孝日記

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先日もこのブログで少し触れましたが、昨今チュニジアでは政変が起き、エジプトでは左記政変に触発されたと見られる焼身自殺未遂事件があり、更にはアルジェリアやモザンビークでは暴動が起きているという状況です。
このような状況が北アフリカ諸国を支配し、尚また不気味な様相を中東諸国にも及ぼしています。
MENA(Middle East and North Africa)と呼ばれる中東・北アフリカ諸国において、例えば湾岸産油国では自国民の場合、所得税、教育費、医療費は基本的に国家負担となり無料ですので、その意味では本来何の問題も無く社会的安定が保たれるはずであります。
しかしそのような国々や、あるいはその他観光資源等に比較的恵まれている国でも上述したように社会問題が起き始めてきたという背景には一体何があるのでしょうか。

まず第一にやはり貧富の差という要因があると思われ、中東産油国は言うに及ばず、北アフリカ諸国においても貧富の差が非常に大きいということが現況の一因であると私は考えています。
そして更にはこの地域における若年層人口の急増と、それに伴い深刻化する失業問題が上述の貧富の差を拡大している背景としてあります。
この地域における30歳未満の若年層は人口の大体6、7割を占めており、学校を卒業しても職が簡単には見つからないような状況で、例えばチュニジアでは「年間8万人以上の大卒者のうち2万~3万人」は就職出来ていません(※1)。
昨年夏に発表されたILO(International Labour Organization:国際労働機関)のデータによれば(※2)、世界で最も若年層の失業率が高いのは正にこの地域であり(中東:23.4%、北アフリカ:23.7%-2009年末時点)、その意味では社会不安が起き易い状況にあるとも言えるわけです。

そのような状況下、ある意味米国のQE2(Quantitative Easing 2:量的緩和第二弾)後に特に顕著になってきた世界的現象とは、所謂エマージングと言われる国に膨大な投機資金が流入しているということです。
そしてその投機資金がどこに流れ込んでいるのかと言えば、一つは、食料分野です。例えば中国は食料関連企業の株式を取得するということだけではなく、食料自体をどんどん抑え始めてきているという状況です。
中国やインドなどが食料の確保に積極的な動きを見せているのは、一つはその国自体の経済発展の中で様々な食に対する実需が増加しているという事実が既にあるからです。
そして更にここへ来て「ラニーニャ現象」により小麦やトウモロコシの産地であるアルゼンチン、ブラジル、米国で干ばつが予想されるとか、あるいはオーストラリアでは小麦の収穫期前に大規模洪水に襲われるといった気象条件も重なって、世界全体の食料に対する在庫というものが急減してきており、需給が逼迫し食料価格が高騰しているわけです。
そのような中でしかも欧米や日本のような先進国では1割強のエンゲル係数がエマージングカントリーでは特に貧困層のそれが極めて高いという特徴があり、要するに食料を中心とした必需品が家計全体の5~7割を占めるというような状況があることも、今回上記問題が起き始めてきた背景の一つではないかというように私は思っています(2011年1月20日日本経済新聞朝刊参照)。

従って、今MENA地域で起こっている現象の背景を上述したように様々な観点から考えますと、この地域における現象の広がりを単なる政治的な問題として捉え短期間で収束すると考えるのは早計ではないかというように見ています。
このような今日的問題の現出に当たっては、①食料価格がグローバルに高騰しているという現況、②それを齎している投機資金のエマージングカントリーに対する短期的移動、③そのような投機資金が生み出される背景としての米国金融財政政策、④この辺りの国々の若年層人口の急激な増加にもかかわらず雇用を提供する産業の未発達等々といったものが主因となっているのではないかというように私は捉えています。

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中東・北アフリカ地域への出張を終えての雑感

参考
※1:チュニジア:政権崩壊 アラブ諸国、波及懸念 強権体制、貧富の差共通
※2:若年層の失業者8070万人 金融危機直撃、ILO調査




 

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