北尾吉孝日記

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「ウォール・ストリート・ジャーナル日本版」の「【コラム】スイス中銀が打って出た危険な賭け」という記事にも下記記述がありますが、一昨日からのドル・円相場の動きというのは「スイス中銀による異例な通貨政策の決定を受け、スイスフラン同様に逃避資金の受け皿になっていた円にも売り」が広がり1ドル=77円台後半まで下落するというものでした(※1)。

『スイス国立銀行(SNB、中央銀行)は6日、無制限の為替介入実施によりスイスフランのとどまるところのみえない上昇を防ぐと宣言した。年初には1ユーロが1.25スイスフランだったのが8月には1スイスフラン近くまで落ちたことを受け、ユーロの下限、つまりスイスフランの上限を1ユーロ=1.20スイスフランに設定したのだ。このSNBの方針発表を受け、ユーロは同日、スイスフランに対し8.8%上昇、1.2スイスフランの下限はクリアされた。』

こうした流れというのを私は日本が為替介入を行なうべき絶好のタイミングであったと捉えており、仮に巨額の円売り・ドル買い介入を実施していれば、3、4円程度の幅で動く確率は非常に高かったのではないかというように考えています。
凡そ2年前に執筆したブログでも当時の藤井財務相に対し「為替介入をするかしないかについて、公言する必要はない」というように指摘しましたが、為替介入の仕方というのは出来るだけ少額で介入効果が最も大きくなるタイミング、つまり一昨日から訪れていたような千載一遇の好機において「黙って」実施すべきものなのです。
歴代の財務大臣を見ていても、「投機的な動きに対しては、これからも注視していく」とか(※2)、「あらゆる手段を排除せず、必要とあれば断固たる措置を取る」というような発言をするだけで適切なタイミングにおいて決断力や実行力といったものが発揮されることは一切ありませんでした(※3)。
また、先月18日にも財務省の中尾武彦財務官が「日銀の中曽宏理事(国際担当)と会談し、円高をはじめとする最近の金融市場動向について緊急の意見交換」を行うということがありましたが、下記事例にもあるようにこれまでの政府・日銀の為替介入というのは「黙って」実施することがない上、常に遅きに失していたのではないかという感を強く持っています(※4)。

『政府・日銀は昨年8月12日にも、当時の玉木林太郎財務官が中曽日銀理事との緊急会談を開催し、同時に外為市場で、取引を前提にドル/円のレート提示を金融機関に求める「レートチェック」を実施。その後に野田佳彦財務相が緊急会見を開き、進行する円高に「適切に対応する」と懸念を表明し、白川方明日銀総裁も同日、為替・株式市場の大きな変動や国内経済への影響を「注意深くみていく」との談話を公表した。その1カ月後の9月15日には、2兆1249億円の円売り/ドル買い介入に踏み切っている。』

15年ぶりに1ドル=83円台をつけた昨年8月、私は『二番底模索の世界経済における円高がもたらす日本経済最後の空洞化』と題したブログで下記の通り指摘しましたが、要は為替介入のタイミングを決断する人間というのが実務で金を張るという経験を全くしていないような人間ばかりであるが故に結局極めてお粗末なものとなってしまうのです。

【やはり財務省、日銀を含めて学者や政治家では、このような難局を打開して行くことは出来ないというように私は思います。やはり相場の世界に生き、肌感覚で直観力を養ってきた人間が、政治の世界にアドバイスをし、そしてまた実質的にそういうものを臨機応変に動かして行くというようなことが必要なのであろうというように思います。
米国を見ますと、歴代財務長官についてはGoldman Sachs出身者のように金融界から非常に多くの人材が輩出されています。また現FRB議長のバーナンキについては学者ではありましたが、以前ブログで説明した通り、正にあの大恐慌を研究テーマにし、如何にそれを防ぐかということに尽力していた学者です。それに加えて、バブル崩壊後、あらゆる失敗をやり続けた日本という国が反面教師としてあったということもあり、彼は迅速な処置を今の所採ることが出来ているということです。】

上記文脈で言えば、財務省や日銀等に属する政策当局者というのは為替介入の仕方というものを何も分かっていないど素人であると言わざるを得ないわけで、その彼らが今後もこれまでのように機を逸した対応を続ける限り更なる円高進行に歯止めが掛かるということはないわけです。
従って、やはり上述したような実務家がこうした介入の判断を行うことが出来る体制を早急に敷くべきではないかというように私は強く思っています。

関連記事
私が懸念している4つのこと
バーナンキFRB議長に対する評価について

参考
※1:円4日ぶり反落、77円近辺で推移 ユーロは対ドルで7日続落
※2:安住財務相:為替市場の投機的な動き注視、断固とした対応継続
※3:外為・株式:円最高値更新 野田財務相「必要とあらば断固たる措置」
※4:中尾財務官と中曽日銀理事が緊急会談、円高で臨戦態勢継続





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  1. 「相場観」や「直観力」というものは、実務経験のなかでしか養われない。
    財務省・日銀の官僚たちが、為替介入を適切なタイミングで決断・実行するためには、
    常日頃から為替介入の仕方を勉強(研究)したほうがいいと思います。
    あるいは謙虚さを持って、実務経験豊富な有識者の方々から助言・指導をいただきながら、
    為替介入の最も効果的なタイミングを窺ってみることが必要だと思います。

    日本の単独為替介入をしたところで効果は目に見えています。単なる時間稼ぎにしかならないのだと思います。
    今の円高・ドル安の流れを変えるには、主要7カ国(G7)の財務相・中央銀行総裁が為替の円売りの協調介入が
    一番手取りばやい解決策だと考えます。



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