北尾吉孝日記

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「米主要企業の7~9月期決算発表が11日の非鉄大手アルコアから実質的にスタート」したわけですが(※1)、金融機関ということで言えば米国において今回最も注目されているのはGoldman Sachsの業績です。
今多くのアナリストがGoldman Sachsの業績について赤字予想を出していますが、仮にそうした予想が正しいとすれば「過去14年で金融危機直後以来2度目」の赤字決算ということになります(※2)。
このように嘗て全盛を誇った最有力投資銀行Goldman Sachsが赤字を計上するかもしれない一つの理由として考えられるのは、2008年12月に『金融危機と銀行業の行方』と題したブログでも下記指摘しましたが、リーマンショック時に破綻しかけ結局インベストメントバンカーというポジショニングを諦めてコマーシャルバンクになったことにより、銀行として様々な制約を受けるためにリスクを取れず収益が十分に上がらなくなっているということがあります。

【先日のWall Street Journalにこの12月までのクォーターでGoldman Sachsが20億ドルの損失を計上しそうであるという記事がありました。あのGoldman Sachsですらこのような状況であり、Morgan Stanleyも同様に大変痛んでいます。他のインベストメントバンカーが大きな損を出す中、空売りなどをして大きな利益を稼ぎ出したこともあったので、最有力のGoldman SachsやMorgan Stanleyは今回の危機に上手に対処しているかのような印象がありましたが、結局全て困難な状況にあるということです。今回の世界的な危機により、Goldman SachsとMorgan Stanleyは銀行持ち株会社に業態転換しましたが、それにより手厚い保護を受けられる代わりに様々な規制を受けることになりました。その中でも特に自己資本比率規制は収益をあげる上で非常に大きな問題だと思っています。
インベストメントバンカーがこれまでどこで儲けて来たかと言えば、リスクテイカーとしてプリンシパルマネーを投資することで儲けていました。今はそれが出来なくなりましたので、過去のように簡単に儲けられるかと言えば、それは大変難しいと思っています。】

昨日の「ウォール・ストリート・ジャーナル日本版」の「ニューヨークの証券業界、12年末までに1万人削減の可能性」という記事タイトルにもあるように、既にWall Streetでは「米証券大手メリルリンチを買収したバンク・オブ・アメリカが全従業員の1割超にあたる3万人を減らす方針を示すなどリストラが加速している」わけですが(※3)、他方日本の金融機関においても下記引用にあるように野村ホールディングス株式会社(以下、野村HD)やみずほ証券株式会社等々、既に人員削減が行われています(※3)。

『他の国内の証券大手も社員の削減に動き出している。手数料収入などが落ち込んでおり、コスト削減が急務のためだ。
みずほ証券は3日、約300人の希望退職を募ると発表した。定年退職なども含め来年3月までに全体の約1割にあたる約700人を減らす。最大手の野村ホールディングスは欧州を中心に海外で約380人の人員削減をするが、「欧州の危機は深刻。追加リストラが必要」(外資系アナリスト)との見方も出ている。』

上記人員削減よりも私にとって野村HDの厳しさの現実を感じたのは「大手レストランチェーン、すかいらーく(東京都武蔵野市)をベインに売却すること」であり(※4)、その売却金額は「約2600億円となるもよう」ですが、私のラフな計算では当該値段で売却した場合、実質的に500億円程度の損失が出るのではないかと見ています。
勿論、償却している部分もあるでしょうから会計上そうした形にはならないかもしれませんがかなりの損失が出ていることは間違いないと思われ、それにも拘らず当ディールを行うというのは野村HDがキャッシュ不足に陥っているのではないかというように私自身は想像しています。
様々なエスティメイトを見て思うのは証券会社受難の時期ということであり、この四半期についても野村も大和もみずほも全て赤字決算になると私は予想していますが、それも恐らく200数十億円から300億円を超える位のかなりの赤字になるのではないかと見ています。
また欧州の金融機関が大変な状況にあるというのは昨日『「デクシア解体」について』でも述べましたが、本日の日本経済新聞朝刊『パリバ「公的資金は不要」、ボルドゥナーヴCFOに聞く――債務国、1つにくくれず』という記事にもある通り、BNP Paribasにおいても今話題になっているようなユーロ圏諸国の国債保有額は膨大なものとなっています(6月末時点・・・イタリア:208億ユーロ、ベルギー:171億ユーロ、フランス:150億ユーロ、オランダ:85億ユーロ、ドイツ:40億ユーロ、ギリシャ:35億ユーロ、スペイン:28億ユーロ、ポルトガル:14億ユーロ、アイルランド:4億ユーロ)。
上記『「デクシア解体」について』でも下記指摘したように、今度イタリアが問題化するということになってくれば、欧州金融機関については巨額の損失、あるいは評価損が出てくるということになって行く可能性があり、格付け機関がソブリン債をどんどんダウングレードして行く中で債券価格が大幅に下落して行くということになるわけです。

【要するに欧州金融機関については基本的には「毒まんじゅう」イコールPIIGSの国債を初めとした債券を皆大量に保有していますし、あるいは相互間でPIIGSにある銀行債や株式を抱えているので、そうした金融機関のポートフォリオが毒まんじゅう化するような状況になるのは目に見えているわけですから、問題はデクシアだけに留まらないというように捉えるべきでしょう。
(中略)GDPで言うと今までは「ユーロ圏(17カ国)全体のわずか2.5%」でしかないギリシャの問題だけが大きくクローズアップされてきましたが、最早「ユーロ圏において経済規模3、4位のイタリア、スペイン」へと問題は移っているのです(※5)。】

従って、中国や日本、あるいはアラブ・中東の産油国の一部といった所が資金を拠出するといった形で欧州銀行が如何に資本を増強して行くことが出来るのかが一つの焦点になるのであろうと思いますが、仏・ベルギー系金融大手のデクシアのようなことが連鎖的に起こってくると、そう簡単には解決出来ない問題になって行く可能性があります。
最後に私どもについて述べますと、上記状況を想定し早くから「ブリリアントカット化」というものを推奨し、また一方で大幅な経費削減を全社に促してきましたから、何とか利益を出すことが出来る体制を創り上げてきています。
そして、上述した「毒まんじゅう」と私が呼ぶものについては、私どものポートフォリオには一切入っておりません。

参考
※1:米主要企業7~9月決算 市場の注目点は プロに聞く
※2:金融街に赤字予想の声
※3:三菱UFJモルガン証券、希望退職に千人応募
※4:野村がすかいらーく売却で最終合意へ、約2600億円=関係筋
※5:特集ワイド:今さらですが 欧州債務危機 続く綱渡り




 

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