北尾吉孝日記

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現在「公正取引委員会と証券監督当局は、昨年11月22日に発表された東証と大証の統合計画について審査を進めている」わけですが、本件に関しては先週火曜日の「私設取引システム促進に向けルール変更も-東証・大証統合後にらむ」と題された記事でも次のように指摘されています(参考:2011年11月24日北尾吉孝日記『「東証・大証統合」について』)。

『SBIジャパンネクスト証券やチャイエックス・ジャパンなどが手掛けるPTSは昨年、TOPIX構成銘柄の取引の5%を扱い、2007年にこうしたPTS市場が始まってから最高の割合を占めた。ただ、欧州やカナダと比べ国内ではPTSの成長は遅れており、ドイツ銀行や野村総合研究所によると、PTSを従来型の取引所と異なる扱いとしているルールが妨げになっている
(中略)日本では投資家が取引所外で株主11人以上との取引を通じ株式5%超を取得する場合、株式公開買い付け(TOB)の実施が義務付けられているが、そうした規定は取引所から買い付けられた株式にはない
(中略)野村総合研究所の大崎貞和・主任研究員は、「東証と大証が統合すれば現物市場だけでなく、先物市場などについても独占力は高まるため、競争制限的なことができるようになる。もしそれが競争を妨げる可能性があるなら、解決策は2つある。公正取引委員会が合併を認めないか、PTSとの市場間競争を活発にするかだ」と指摘』

上記「5%ルール」については昨年7月のブログ『「PTS元年」の現況と展望』等でこれまでも指摘し続けてきたことですが、独禁法上の観点から考えれば当該ルールを撤廃せずして圧倒的シェアを持つようになる東証・大証統合は許されるべきではありませんし、そもそもPTSも取引所外として定義すること自体が全くナンセンスであると思っています。
更に言うと『グローバルな取引所再編成の時代』と題したブログでも「10%ルール(PTSの運営において、取引量が対国内全取引所比の全売買代金の10%を越えてはいけないという制限)」等について下記の通り指摘しましたが、こうした過去の遺物とも言い得る理解不能な制度を取り払わない限りは今回の統合計画を簡単に認めるべきではないでしょう。

【上場審査を筆頭に様々な審査上のコストが掛かる中、一方はそれを負担し片一方は負担しないというのは可笑しいのではということですが、私もそれについて理解出来ますが何故10%なのかという問題は未だ残ったままです。
更に言えば、上述の通り東証・大証合併については独禁法上の制約が当然あると私は捉えていますが、仮になされた場合は独禁法に対するものとして当該10%ルールは当然廃止すべきではないかということさえ私は考えています。
この10%という数字は精緻なコストを割って算出されたものでもないでしょうから「何故10%なのか」「20%ではいけないのか」といったことは問われるべきですし、更には「ある意味独禁法上の違反とも思われるような合併が行われた場合、何故その10%は維持されなければならないのか」といったことについても、私は法的な問題として横たわっているのではないかというように思っています。】

要するに上記記事でも指摘されている通り今東証・大証統合に向けて金融庁がなすべきは第一にPTSの発展により市場間競争を促進し、投資家の利益の増大に資することではないかと私は認識しており、欧米では当たり前のことが何故日本ではこれ程までに時代遅れなのかというふうにいつもながらに考えさせられる次第です(下記参照:2010年12月27日北尾吉孝日記『日本税制の諸問題』より抜粋)。

【所謂「最良執行(どの市場で取引すれば最も有利かをシステムが瞬時に判断し、最も有利な市場を選んで自動的に売買を執行すること)」についても一言述べますと、日本では2005年に最良執行義務が導入され、金融商品取引法では「第40条の2」に規定が設けられていますが、実際には未だに最良執行というものは日本に定着してはいません。
このような状況は正に異様と言う他なく、投資家保護の観点に立つならば、最良執行を行わなくても許される現在の仕組みは直ちに改変されなくてはなりません。
例えば米国では最良執行を行わなければ投資家保護の観点から当局に罰せられるのが当たり前で、なぜ日本では未だ以て投資家が不利益を被るような状況になっているのか私には理解出来ません。
これについても即刻改めるべき問題であり、投資家がより有利な売買執行を行えるマーケットで取引出来るようにすることを証券会社の責務として負わせるべきではないかと私は思っています。】




 

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