北尾吉孝日記

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先週金曜日の日本経済新聞朝刊「(大機小機)問われる経済の持続可能性」でも所謂「サステナビリティ(持続可能性)問題」に関して下記通り指摘されていましたが、サステナビリティという議論においては当然ながら短期・中期・長期に分けて考えなければなりません。

『持続可能性問題とは、現時点で問題が表れているわけではないが、現在の状況を続けていると将来必ず問題が表面化し、国民の福祉が損なわれる状況を指すものだ。
(中略)短期的には景気の持続可能性がある。
(中略)中期的には財政の持続可能性が大問題である。
(中略)長期的には人口を巡る持続可能性問題がある。
(中略)現在の日本経済で最も求められていることは、これら失われた持続可能性を取り戻すことである。』

この持続可能性については、時間の関数として短期・中期・長期に夫々の問題として捉え、そしてそのバランスが崩れた時に大変な事態に陥る危険性のあるものについては中長期的なものについても今から手を打って行かねばならないということです。
例えば、今焦点となる問題が何かと言えば、危急を要するものとして本ブログにて幾度も指摘している個人金融資産(1471兆円:2011年9月時点-※1)と長期債務残高(937兆円:2012年度末見込み-※2)とのバランスについて何時までサステナビリティが維持出来るのかといったことが挙げられましょう。
また、日本の輸出産業というのが何時まで日本で製造した物を日本から輸出出来るのかといったサステナビリティに関する問題も現出してきています(参考:2011年1月25日北尾吉孝日記『進む産業空洞化に対する懸念~家電「純輸入国」に転じた日本~』)。

【勿論「円高」は続いてはいますが既にメジャーな日本の輸出企業は生産拠点の殆ど全てを海外に移しており、業績に対して短絡的にネガティブインパクトが及ぼされるというものではありません。
また日本という国は2005年から所得収支が貿易収支を逆転しているという状況で嘗てのように日本で製造した物を日本から輸出するという時代はある意味終焉を迎えており、海外で製造し海外から得られる金利や配当を拡大する中で経常収支のプラスを齎すというようなステージにあるわけです。】(※3)

財政の持続可能性について更に言うならば、野田総理は国民を恫喝するかのように「日本は財政改革を推進する必要があり、大幅に増加を続ける政府負債額をコントロールできなければ、ヨーロッパのように、これまで以上に問題に直面することになる」などと発言をしていますが(※4)、より根本的には消費増税に頼り切るのではなく自然増収を図るための経済成長戦略の立案・実施、そして徹底した行政改革による無駄の排除、及び様々な競争制限的な旧制度の徹底改革の推進といったことにまずは取り組むべきではないでしょうか(下記参照:2012年1月25日北尾吉孝日記『「民主党の政権政策」とは何か』より抜粋)。

【今民主党が第一に為すべきは現行の「社会保障と税の一体改革」という焼け石に水程度の「改革」ではなく、あの2009年夏の政権交代時に民主党が公約として掲げた「税金のムダづかい」を徹底的に排除するということであり(※5/※6)、その部分に対してはこれまで全くと言って良いほど努力というものが為されていないのです

(中略)消費増税にどうしても踏み切るというのであれば議員歳費や議員定数の大幅削減等は当たり前のこととして、野田総理自身が野党時代に声高に主張していた所謂「天下り・わたり」というものの徹底廃止、即ちより大きな財源を生み得る無駄な独立行政法人の全廃を直ぐにでも実施すべきではないでしょうか(参考:YouTube「野田総理 マニフェスト 書いてあることは命懸けで実行」)。】

先週火曜日の日本経済新聞朝刊「大機小機 大盤振る舞いと増税」でも『ずばり増税は「大盤振る舞いの後始末」「マニフェスト(政権公約)失敗のツケ」ではないのか』として下記の通り指摘されているように、リーマンショック後の経済立て直しで歳出規模が膨らんだという事実はありましょうが、それ以上に如何に「ムダ」にメスが入っていないのかが重要な問題でありましょう。

『今回の消費税率5%引き上げによって、政府は約13兆円の税収増を期待する。一方、今国会に提出された2012年度予算の一般会計歳出規模は実質94兆円、いわゆる隠れ借金を含めると96兆円だ。実はリーマン・ショックの前まで、この規模は約82兆円だった。わずか4年ほどで、歳出規模は(復興のための補正予算を除いても)実質14兆円拡大している。
(中略)消費増税で調達される13兆円は、歳出の拡大規模とほぼ一致する。一般には高齢化で社会保障費が拡大するといわれる。しかし政府自身が認めているようにその額は年間1兆円、5年で5兆円だ。したがって約10兆円の金額が、社会保障の自然増以外によってもたらされている。12年度の予算でも、整備新幹線は3区間すべてで着工、エコカー減税の継続など、かつての自民党族議員も驚くような大盤振る舞いがなされている。』

勿論、『租税負担率に社会保障負担率を加えた「国民負担率」を見ると(中略)経済協力開発機構(OECD)加盟34カ国のうち、算出可能な30カ国中で日本は7番目に低い』ですし(※7)、また「日本の消費税にあたる付加価値税の引き上げが相次いでいる」欧州の状況と比べれば増税の余地は十分にあるわけですから(※8)、上記サステナビリティ問題を解決する一手段としての消費増税を私は一概に否定するものではありません。
唯、増税実施前にやるべきことが全く為されていないという所に今最大の問題があるわけで、上述の「自民党族議員も驚くような大盤振る舞い」は論外として「公務員給与削減で民自公合意 12~13年度は7.8%」程度の歳出削減ではなく、先ほど述べたようにより大きな財源を生み得る無駄な独立行政法人の全廃といった「税金のムダづかい」徹底排除に向けた本格協議を与野党共に直ぐにでも始めるべきではないかと思うのです。
最後に上述の「(大機小機)問われる経済の持続可能性」でも議論されていない部分について以下簡単にコメントしておきます。
今後日本においては震災復興という大義の下で20兆円程度とも見られる多額の公的資金が「真水」として出て行きますから、今というタイミングにおいて最も重要なのは日銀の「攻め」の金融緩和政策と併せ、発現してくる復興需要を生かして日本経済の浮揚を齎し、そして遂にはデフレ脱却へと如何に導いて行くことが出来るのかを考えることであり、デフレ脱却により円高問題も終焉し得るわけです。
唯、問題となるのはそうしたシナリオに上手く乗って金利が上昇し出すようなことになってくれば、今度は金利負担のために財政赤字が雪だるま式に増加して行くという世界があるのです。
例えば、今後金利が2%上昇したとしても特に問題ではないというふうに考える知識人も多くいるかもしれませんが、「消費増税で調達される13兆円」に対して18兆円の金利負担増になるという事実をきちっと認識した上で議論を展開すべきであり、サステナビリティという文脈においても「税金のムダづかい」を徹底的に排除し切り詰める所を切り詰めて行くという配慮が求められているというふうに私は思っています。

参考
※1:2012年2月9日東京新聞「<集めて分ける 社会保障と税・格差編>エコノミストら提唱
※2:2012年2月17日MSN産経ニュース「不成立なら借金返済の道筋立たず 政府は歳出抑制を
※3:2011年12月8日北尾吉孝日記『見直されるか日本株
※4:2012年1月15日イランラジオ日本語『野田首相、「イランとの経済関係を継続する」
※5:民主党の政権政策Manifesto2009
※6:2011年10月13日北尾吉孝日記『政権交代から2年後の今
※7:2012年1月14日時事ドットコム「租税負担率
※8:2012年2月18日SankeiBiz「欧州、付加価値税相次いで引き上げ 日本国債、頓挫なら標的に (1/2ページ)




 

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