北尾吉孝日記

『迫り来る「財政の崖」』

2012年11月2日 15:49
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本ブログで幾度となく指摘している通り、私は世界全体の景気動向や為替動向、そしてまた復興需要が日本経済の実需に如何なる影響を及ぼし需給ギャップの解消に繋がり得るか否かという部分について、もう少し時間を掛けながら良く見て消費税増税に対する判断を下すべきではないかと一貫して消費税に関しては時期尚早と指摘し続けてきましたが、日本は日中領土問題及び欧州債務危機に派生する経済低迷という中で「貿易赤字過去最大」を記録し、そうした経済実態の下で消費税増税を実施して行くということにもなりかねず、景気の悪循環プロセスに陥るのではないかと懸念しています(※1)。
そして今一つの私の懸念事項としてバーナンキが名付け親とされる所謂「財政の崖(Fiscal Cliff)」がありますが、当該問題の行方は来週火曜日に投開票が行われる米大統領選でどちらの候補者が勝利を収めるのか、そしてまた米国議会の勢力バランスが如何なる形となって行くのか、といったこととも密接に関連してきます。
財政の崖のネガティブインパクトについては様々な見通しが示されており、例えば連邦準備理事会(FRB)、米議会予算局(CBO)、及び多くの市場関係者は「赤字削減のため支出が1ドル削減されれば、国内総生産(GDP)も1ドル減るという」見方に基づき「米経済に及ぼすマイナス効果は約6000億ドルで(中略)2013年のGDPを0.5%押し下げると推定」し、他方で学界や国際通貨基金(IMF)の一部エコノミストは「現在のように金利が非常に低い水準にある場合、財政引き締めは通常よりも重大な影響を景気に与えるという見方」に基づき『1ドルの支出削減は最大で1.70ドルの景気収縮効果をもたらす可能性があるとして、「崖から転落」すれば米経済は想定されている以上に深刻なリセッション(景気後退)に陥るリスクがあると警告している』ようです。私もそのリスクを非常に懸念しています。ただ米国金利の底入れ気配は、こうしたリスクシナリオの修正される可能性を市場が織り込んでいるのかもしれません(※2)。
ただ私自身は「給与税減税の失効や自動的な歳出削減などがすべて重なれば、国内総生産(GDP)比4%の影響になる」とも言われる「非常に無秩序な財政収縮」によって、これまで米国経済を支えていたものがある時から無くなってしまうとなった場合、今のタイミングにおいては非常に不味いことであるというふうに感じており、世界は再び世界恐慌を意識せねばならないような状況に陥るリスクもあるかもしれないと最悪の事態も想定しながら経営の舵取りをしています(※3/※4)。
過去10年間で年平均10.7%の成長率を遂げた中国もリーマンショック時には世界経済の牽引役として何とかその役目を果たし得たわけですが、此処へきて流石の中国にあっても所謂「デカップリング」は難しいという状況に陥っていますから、今後米国は極めて難しい経済運営の舵取りを強いられることになるであろうと思います(※5)。
私としては、世界経済のためにはロムニーに勝って貰った方が良いのではないかと考えていますが、知り合いの米国人に選挙情勢を聞いて見ますと、どうもオバマ優勢の声がやはり多いように思われ、私は今そのことを非常に気掛かりにしているところです。

参考
※1:2012年10月25日北尾吉孝日記『「貿易赤字過去最大」を受けて
※2:2012年10月29日ロイター『焦点:「財政の崖」の米景気押し下げ効果、想定以上との警告も
※3:2012年10月14日日経ヴェリタス「不透明感漂う米経済、元財務次官が見通す――米ブラックロック、フィッシャー氏」
※4:2012年10月31日ブルームバーグ「サンディは米成長押しさげず、財政の崖対処可能-エラリアン氏
※5:2012年10月5日北尾吉孝日記『2013年の政治経済展望




 

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