北尾吉孝日記

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天才棋士・羽生善治氏の強さに感心し、私は彼の著書全てを読んでおり、先日ある取材を受けた際も『直感力』(PHP研究所)という本を薦めておきました。
此の将棋の世界、狭いと言えば狭いものですが、あの狭い将棋盤においても無限のオプションがあるわけで、そういう中で対局に勝ち続けて行くには大変な集中力や思考力等々、様々な事柄が要求されるのだと思います。
その羽生氏による1年半前の記事に「不確実性をどのようにとらえるか」というのがありましたが、その問いに対して彼は「不確実だから調べても分からないという姿勢ではなく、不確実だからこそ、詳しく調べて分かることと分からないことを区別していくという方向性がやはり必要なのではないかとも考えています」と述べていました。
以下この不確実性ということについて私見を申し上げたいと思いますが、先ず以て「現代は不確実性の時代だ」といったことは昔からよく言われてきたわけで、今正に不確実性が急に高まったということではなく、「此の世はあらゆることが常に不確実だ」という前提認識を持つべきだと思います。
殆ど全てが成功するかのように勝手に思いたがる人というのは結構いますが、そういう人に対して私は「十のうち一~二つが思い通りに行ったら御の字です。ひょっとしたら百のうち一つしか思い通りにならないかもしれない。事が成功するなどというのは、それぐらいの世界なんですよ」というふうに何時も話しています。
ある人は不確実性と言って想定外の事態に大慌てするのかもしれませんが、元々成功する確率なぞというのは極めて低いわけですから、A案が駄目ならB案、B案が駄目ならC案というように、「策に三策あるべし」として少なくとも三つ位は常に用意しておくことが一番大事なのだと思います(※1)。
ひとたび状況が暗転したら不確実性を理由にくどくどと言い訳し始めるとか、あるいは不確実性の時代で何が起こるか分からないと言って何もしないというのではなく、寧ろ大事なことは「現状で判断する限り、三策のうち第一の手としてはA案を打つのが最も良いだろう。しかしA案を全力投球して行く中で、環境変化によってはB案やC案への切り替えも検討しよう」といった形で手を打って行くという考え方だと思います。
『書経』の中にも「有備無患(備え有れば患い無し)」とあるように、備えあれば憂えなしで私の経営もそういう形で行っていますが、言ってみれば物事は八割方うまく行かないものだという前提に立って、不確実な世界と共に生きる生き方を模索すべきだと私は思っています(※1/※2)。

参考
※1:注目の人 – 人間学の致知出版社「古典に基づく経営哲学の実践者 北尾吉孝
※2:2010年7月7日兵庫県ホームページ「但馬県民局/局長メッセージ(平成22年6月)




 

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