北尾吉孝日記

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あのリーマンショックから5年、07年8月のパリバショックから考えると6年が経過しました。あっという間に過ぎ去った感がしますが、此のリーマンショックの後遺症によって世界各国の金融機関は大変な痛手を被りました(※1)。
11年12月のブログ『見直されるか日本株』でも述べた通り、リーマンショックというのはCDO(Collateralized Debt Obligation)やCDS(Credit Default Swap)といった金融デリバティブ商品が膨れ上がり、そしてまたそれらが細々にされエキゾチックに混ぜられて毒まんじゅうが作られ、そうしたものが世界中に伝播する中で起こった現象であります。
上述のCDOやCDSを日本の一部金融機関も結構購入していたというのは勿論事実でありますが、日本というのはその後に進行した「欧州ソブリン危機」も含め震源地からは遠く離れていたと言い得ます(※2)。
しかしながら、「北米市場向けの輸出に依存するところの大きかった日本経済は、急激な外需の減少に見舞われること」にもなって、リーマンショックの影響をある意味じわじわと受けてきました(※3)。
そして更には民主党政権と白川日銀総裁の下、経済は全く悪くなる一方とまでは言いませんが低迷の一途を辿ってきたわけですが、陰の極に達した頃にちょうど安倍晋三氏が現れ、陰の極から抜け出すということが出来ました。
我々も漸く一息ついたところで、今度は「第2のリーマンショック」などと称され騒がれている中国の所謂「シャドーバンキング(影の銀行)」、つまり「融資規制のある銀行を介さない金融取引全般」が問題視されています(※4/※5)。
より端的に言えば、「正規の銀行外からの借入れ」ということですが、此のシャドーバンキングの融資残高については、例えばIMFが約460兆円と言ったりJPモルガン・チェースが500数十兆円と試算したりと、様々な推計が出されています(※6/※7)。
そしてまた、米国サブプライムローン問題の時と同じように、不良債権化したものが毒まんじゅうとして混ぜられた「理財商品」の残高が中国当局の公表数値で約130兆円(13年3月末時点)、「3年余りで8倍強に増え、中国の名目国内総生産(GDP)の約16%に達した」とされています(※8)。
こうした問題がまたぞろ起ってくるという中で、「ミニサブプライムローン問題」とも言われているようで、「ミニ」が付いているという意味では未だ少し安心するものがあるにはありますが、何時の時代になっても世界中の何処かで同じ類のことが為されているということでしょう。
米国では、3年前に成立した金融規制改革法(ドッド・フランク法)で定められた「規定(そのうちの多くは12年7月までに実施に移される予定だった)」の内、先々月1日までに完了したのは「38.9%に過ぎず、同法が定めた規定の実施期限の60%以上が守られずに過ぎてしまった」という中で、オバマ大統領も之を問題視し先日も同法の完全実施を規制当局に要請しました(※9)。
しかしながら、3年半前のブログ『米国金融規制改革法案について』でも指摘したように、金融というものはそもそも自由を好むものですから、そういう意味では今でも調整が難航している規制については、今後も金融機関や共和党等の強い反対によって中々導入されない状況が続くのではないかと思います(※10)。
それからもう一つ、リーマンショック前のGoldman SachsやMorgan Stanley等の米国インベストメントバンカーの強さや勢い、あるいはエネルギーといったものが、コマーシャルバンクになってしまったリーマンショックの後、そこそこ収益を上げてはいるものの大きく削がれてしまったという印象を私は持っています(※11)。
08年12月のブログ『金融危機と銀行業の行方』でも述べたように、インベストメントバンカーがリーマンショック前に何処で儲けてきたのかと言えば、リスクテイカーとしてプリンシパルマネーを投資することで儲けていました。
彼らがリスクを取ることにより、色々な意味で中国の必要とする資金と技術を満たして行ったということもあって、勿論結果として彼らは大儲けして売っているわけですが、リスクを取るという重要な役割を果たしていたことが大事だと思うのです。
今、リスクテイカーが世界中から消えて行くということはある意味非常に残念なことでもありますし、世界経済の発展ということにおいて一つの阻害要因にもなっているのではないでしょうか。
ただ先ほど申し上げたように、何時の時代であっても如何に厳格な法改正を行おうとも、金融テクノロジーの進化と長引く低金利下での金余りというものとが合わさって、エキゾチックな商品がどんどん作られ販売され、そして金利が急上昇すれば不良債権となって行くということは、金融の世界において中々なくならないのではないかと思う次第です。

参考
※1:2012年9月19日北尾吉孝日記『QE3前後における世界経済の情勢認識
※2:2011年12月8日北尾吉孝日記『見直されるか日本株
※3:2013年7月9日『金融依存の経済はどこへ向かうのか―米欧金融危機の教訓』(日本経済新聞出版社)
※4:2013年6月27日ダイヤモンド・オンライン『中国のシャドーバンキングを放置すれば「第2のリーマンショック」が起きるのか?
※5:2013年7月16日週刊エコノミスト「特集:マネー大逆流 出口と中国 ◇緩和依存の世界が終わる 出口におびえる金融市場
※6:2013年7月21日毎日jp『G20財務相会議:閉幕 新興国、マネー流出懸念 「緩和依存」脱却が課題
※7:2013年7月22日ガスエネルギー新聞『「賢人の目」ジャーナリスト 元朝日新聞編集委員 山田厚史 中国にも「影の銀行」』
※8:2013年7月5日日本経済新聞「影の銀行、中国揺るがす 融資規制を背景に膨張
※9:2013年8月20日ウォール・ストリート・ジャーナル日本版「オバマ米大統領、ドッド・フランク法の完全実施を規制当局に要請
※10:2013年8月23日日本経済新聞「金融規制導入の調整難航、賛否両論で作業遅れ
※11:2011年10月13日北尾吉孝日記『日米金融機関の四半期業績




 

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