北尾吉孝日記

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今朝「大企業・製造業DIプラス12 金融危機前回復」と予想以上の良い結果となった日銀企業短期経済観測調査(9月短観)が発表されましたが、本日夕方の閣議では「消費税率を法律どおり来年4月から8%に引き上げることや、新たな経済対策の策定を決める」とされ、そしてまた、安倍総理「みずから記者会見し、消費税率の引き上げを決断した理由や、新たな経済対策によって経済再生に向けた道筋を確かなものにしていく決意を示すこと」とされています(※1)。
一昨日の日経新聞に載っていた「消費税率を来年4月から8%に引き上げることについて」の世論調査結果によれば、賛成47%・反対48%と未だ以て少し反対が上回るような状況になっていましたが、此の反対している向きにおいては嘗ての橋本龍太郎内閣時の悪い思い出を挙げるような人も結構います(※2)。
即ち、2年程前に安倍総理も指摘しているように、「阪神大震災後の景気回復軌道にあった97年、橋本龍太郎政権は消費税増税に踏み切った。消費税収こそ当初増えたが、国民負担の増大で日本経済は腰折れし、所得税収と法人税収は激減した」ということですが、あの時と今とでは状況が全く違うということを、我々はきちっと認識しておかねばなりません(※3)。
あの時の増税判断というのは、正に銀行を中心とした日本の金融機関が不良債権問題に喘いでいる最中であり、そしてまた国際的に見ても、97~98年頃にアジア経済危機が起こるという状況の中で下されたものでした(※4/※5)。
其処に以てきて、あの橋本内閣による最悪のディシジョンメイキングというのは、消費税率が3%から5%に引き上げられただけでも5兆円の負担を強いられるにも拘らず、更に「特別所得減税打ち切りによる2兆円」と「医療費の自己負担増による2兆円」も併せて行われ、総額9兆円程度の負担増が為されたということです(※5/※6)。
だからこそ、あの時『当時の米クリントン大統領から「ばかげた増税」と批判され』、結果として日本経済の成長は腰折れしたわけですが、本日の日経新聞朝刊にも出ていたように、今回は寧ろ「7300億円(企業の投資を促す減税)」、「1600億円(賃上げ促進税制の拡充)」、「1100億円(住宅ローン減税の拡充)」、そして「約9000億円(復興特別法人税の一年前倒し廃止)」ということで減税規模が大体2兆円に上るという話です(※7/※8)。
上記7300億円ということに加え、更には公共投資や震災復興事業といったことに対しても3兆円以上の措置がとられるということですし、あれだけ法人実効税率の引き下げと言っていた割に少し引っ込んだ感じはしますが、之も「速やかに検討を開始する」ということで別にNOとしているわけではありません(※8)。
こうした政府・与党の政策的対応の相違のみならず、先月19日のブログでも述べたように、今度は2020年東京オリンピックの準備がこれから始まって行くわけですから、97年当時とは全く環境が違うという認識が正しい認識だろうと思われ、故に今私は法制化されていた通りの消費税増税に寧ろ踏み切るべきだという方向に傾いています。
先月6日のブログでは『荘子』斉物論等に出ている「朝三暮四」ということ、即ち「中国、宋の狙公(そこう)が、飼っている猿にトチの実を与えるのに、朝に三つ、暮れに四つやると言うと猿が少ないと怒ったため、朝に四つ、暮れに三つやると言うと、たいそう喜んだという」故事に倣い、増税の幅について初めを3%ではなく2%にし、後を3%にするということが出来ないものかとも提案しましたが、2020年東京五輪の御蔭で最早その必要はなくなりました。
4~6月期のGDP改定値が年率換算で3.8%増に上方修正され、日銀短観が予想以上の好結果だったという必要条件、そして東京オリンピック招致が成功したという十分条件が共に満たされた現況において、更に先に述べた手を一応景気対策として打って行くというのであれば、あの97年の悪い思い出を今持ち出すのは妥当ではないと私は考えています(※9)。

参考
※1:2013年10月1日NHK NEWSWEB「首相 消費税率の引き上げを表明へ
※2:2013年9月29日日本経済新聞「消費増税、賛成47%・反対48% 日経世論調査詳細
※3:2011年8月10日ZAKZAK「増税しなくても被災地復興の策はある
※4:2013年8月30日北尾吉孝日記『QE3縮小前の世界金融経済情勢
※5:2008年2月28日国立国会図書館ISSUE BRIEF NUMBER 609「消費税を巡る議論
※6:2013年8月21日ダイヤモンド・オンライン『1997年の消費税引き上げは本当にトラウマか?消費税引き上げは市場への「最低限の愛」――高田創・みずほ総合研究所チーフエコノミスト
※7:2013年8月27日SankeiBiz「消費増税、冷え込んだ平成9年との違いは…金融危機リスク
※8:2013年10月1日日本経済新聞朝刊「減税規模2兆円、法人税率下げ、速やかに検討、与党税制大綱」
※9:2013年9月19日北尾吉孝日記『2020年東京オリンピック開催決定後の日本~消費増税判断および経済株式展望~




 

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