北尾吉孝日記

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拙著『ビジネスに活かす「論語」』(致知出版社)の第四章『組織づくりは「孝」から始まる』の中で、私は「組織力を高める第一歩は、できる限りいい人材を選ぶところから始まる」と述べた後、「徒党を組む人には注意しなくてはいけない」として次のように指摘しました。

【組織で次に考えなくてはいけないのは、組織内に派閥ができないように注意することです。いわゆる大企業病などはその典型ですが、社内に徒党を組む人が出てくるのです。たとえば副社長が二人いたら、A副社長派とB副社長派に分かれて、どっちも社長になろうと競う。それによって社内が二つに割れて、社長になった派閥の人が一緒に昇進していくというようなケースが往々にしてあります。
しかし、徒党を組むような人たち、あるいは付和雷同する人たちというのは、会社に弊害をもたらすだけです。
孔子は「君子は周して比せず、小人は比して周せず」(為政)といっています。「周」というのはみなと仲よくすることで、「比」というのは偏るということ。だから、君子はみなと仲よくしながら偏らない。つまり、徒党をつくらない。
一方、小人は仲間内での成績ばかり気にして、意見を同じくする一部の人を贔屓して互いに傷を舐め合い、庇い合う。そういう世界がサラリーマン社会には生まれがちです。それが大企業病の原因にもなっていくのです。
組織を弱める力というものは、最初から排除していかなくてはいけません。】

これ即ち、古代中国の有名な兵法書『六韜(りくとう)』の「守土」に「両葉不去、将用斧柯:両葉去らざれば、将に斧柯(ふか)を用んとす」とある通り、正に「双葉のうちに摘み取っておかねば大木となってから斧を用いなければならなくなる、つまり、災いは早いうちに処置しておかねば面倒なことになってしまうという」ことです。
私は上記拙著の引用箇所に続けて、「そのためには、そういう資質の人間を採用しないのが一番手っ取り早い」と書きましたが、「採用しない」とは言うものの実際は之が中々難しく、私も間違って採用してしまうということが時々あります。
此の組織の中には常に、初めのうち猫を被っていて中々本性を見せないけれども、段々と権力を持たせたり一旦その地位に就かせたりすると、そうして徒党を組む輩というのが結構います。
そして自分の気に入る人だけを重用して行き、結局は組織にとって大変なマイナスを被らせるというわけで、孔子もこうした人を非常に嫌っていたのは上記した通りですが、やはり派閥を作るとか何々組を作るといった輩に対して、我々は本当に気を付けなければなりません。
基本的にトップというのは、そうした事柄に目を配らせながら事を運んで行かねばならないのですが、ではトップは先ず以て何を良く見どこで変化を捉えるかと言うと、やはり最も大事になるのは「ヒト、モノ、カネ」の3面の動きです。
例えば経費を時々調べてみて、交際費や備品等が急激に増えたりしていないか、あるいはコーポレートカードなどを持たせた場合その勝手な使用はないか、等々と費用項目の突如たる変化があるかどうかを見、そして場合によっては金勘定をしていたのは誰かを特定するといった具合です。
あるいは、交通費などにしても勝手にハイヤーを呼んで使ってはいないかというふうに、権力を有していなかった時代にはしなかった悪事を、権力を持たせた途端に様々働く輩というのが、結構見受けられるのが現実です。
私自身「ヒト、モノ、カネ」の動きに関して要所要所で見てはいますが、細心の注意を払って採用したつもりでも、時にその人に帰属する問題を見逃すこともありますし、そもそも人間というのは常に変化して行く生き物です。
それは良いように変化する時もあれば、逆に地位を得る共に悪しき変化を見せる場合もありますが、唯一つ言い得るのは結局悪いように変化して行く人は、聖賢の書を読み聖賢の道に学ぶといった類を全くしていないということです。
そして、自分自身を磨くということを怠り私利私欲の海の中にその全てがつかりきって、権力欲・金銭欲・物欲等々と欲にまみれてしまうわけで、やはり徒党を組むようなそうした輩は良く見て注意して行く必要があるでしょう。




 

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