北尾吉孝日記

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産経ニュースにも『「また下方修正か」デジャブのような負のスパイラルにはまり込むソニー』という記事が、先週金曜日にありました。
BLOGOSでも先月議論されていた此のソニーの凋落はソニーに限った問題でなく、日本の産業構造がものづくりに必ずしもそぐわぬよう成り始めている、という厳然たる事実を物語っているのだろうと思います。
Latecomer’s Advantage(後発部隊は良いとこ取り出来る)という経済用語もありますが、上記を換言すれば中国を中心とした低賃金でものづくりを行う国々が出現し、更には先進諸国の技術的成果をいとも簡単に手に入れて行ったということです。
しかし之は考えてみるに、例えば『「エルピーダ経営破綻」と時代の潮流』(12年2月28日)でも述べた通り、鉄鋼分野においてはブリティッシュスチールからUSスチール、そして新日本製鐵へと覇権が移行したという歴史があります。
国際競争力というのは経済的コストも全て含め、その時その時の企業を取り巻く環境によって決まってくるものですから、ソニーの置かれた状況に関しても、ある意味仕方がないことかもしれません。
とは言うものの仕方がないから最早如何ともし難いというのでなしに、ソニーの衰勢を以て今後日本における産業構造かくあるべしということが今正に考えられねばならず、やはり技術革新が次々と為されて行かねば激変する環境の中で、極めて多様化した消費者ニーズに対し応えられては行きません。
ものづくりで一度その主役の座を明け渡して行くとなれば、その主たる生産国において消費者ニーズやニーズに関する情報が集まり、研究開発がそこでどんどん進められて行くことになりますから、ぐずぐずしていたら日本は置いてけぼりにならざるを得ません。
日本の置かれた状況は既に極めて深刻であると認識すべきで、その現況は新たに革新的なものを創出することでしか食い止められないわけですが、では何ゆえイノベーションが日本で起こって行かないかと言えば、イノベーションを起こす風土が現在十分に備わっていないからでありましょう。
例えば米国という国を見るに、何人であろうと優秀であれば様々な事柄でチャレンジをさせて行き、そして起業するのであればそういう人の起業した会社に国や地方公共団体の助成金のみならず、エンジェルやベンチャーキャピタルも含めきちんとお金をつけて行く、という風土が備わっています。
産学協同・税制改革・公的資金等を通じた新産業育成のメカニズムの具現化、あるいは留学先でシェークスピア時代のイディオムを言いふらすことしか出来ないような時代錯誤の英語教育および創造性・革新性に満ちた子供達を育て得ない学校教育全般の根本的転換といった、非常に広範かつ長期に亘り然も直ぐに結論の出ないような事柄に取り組んで行かねばならず、一旦問題化してしまった場合そこから抜け出すのは中々容易ではありません。
此の辺りのについては、『なぜ日本は「新産業クリエーター」になれないのか』(12年2月8日)や『日本の教育、欧米の教育』(14年4月2日)等々で詳述済みですので、御興味のある方は是非そちらを御覧頂ければと思いますが、いま日本が抱える大問題を認識したところで急変革を実現し直ぐに新しい世界に挑戦できる、という類の話では決してないのです。
ものづくりの第一線から日本が段々と脱落して行く中、自動車産業にあっては未だ何とか食い下がっている状況ではあるものの、日本勢は例えばハイブリッドからシフト出来ない内に電気自動車で遅れを取りつつあるといった部分もあります。
4年8ヶ月前のブログ『トヨタの大規模リコール問題について』でも、私は「自動車の未来がハイブリッドではなく、電気自動車に向けて動きを早めている現状を考えますと、下手をすればトヨタという企業が本当に無くなってしまうかもしれない」と述べました。
昭和50年代、60年代に当時の通産省がある意味上手く機能したが故、現在日本の自動車産業が世界的地位を得ているという側面もありましょうが、此の時代にあって電気自動車の事業化に国を挙げて邁進する所が出てくるとなれば、電気自動車の生態系が出来上がっていない日本勢はその波に乗って行けないのではないでしょうか。
また、バイオテクノロジー分野でもiPS細胞(新型万能細胞)で未だ以て世界を凌駕しているのであれば、此の産業の裾野を如何にして広げて行くかに関し政府が中心となって指針を示すことも必要でしょうし、当該分野に取り組んでいる民間企業を応援する仕組みも早急に構築されねばなりません。
あるいは、日本における発送電システムの抜本的変革ということも、あの3.11以後も中々前進して行かず時間だけが過ぎているような状況ですが、之をストレートに決めてしまえば設備投資も躊躇なく実施されるようなって行くことでありましょう。
そして日本の電力における近代化を齎すべく、IT技術を使って電力を効率的に供給する次世代送電網「スマートグリッド」の世界を一挙に作り上げて行くべきでしょう。此の日本でどんどんと革新というものが起こらず今後も掛け声倒れに終始するのであれば、日本の将来は暗いものになると言わざるを得ません。




 

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