北尾吉孝日記

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いま日本では「一千万人鬱病時代」と言われています。私も鬱病の人と御目に掛かることが非常に多くなってきています。
上司から少し怒られたとか取引先との間で少し揉めたといった理由、あるいは新しい部署に移った後そこに上手く適応できないといった理由等々、特に上司との関連において人間関係の難しさから、鬱を発症するケースが多いような気がします。また一般的に対人関係と称されるものの中に、適応障害というようなケースが多くを占めていると思います。
いま何ゆえ「一千万人鬱病時代」かと考えてみるに、鬱病患者の方には怒られるかもしれませんが、一言で言えば我が子のためと親があらゆることをしてあげ、過保護に育てるといった所謂豊かな社会に共通する風潮が大きな原因になっていると思います。
『韓非子』にある言葉、「厳家に悍虜(かんりょ)なく、慈母に敗子あり」とは、「厳しい家庭になまけものの召使いはいないし、過保護な家庭には親不孝者が育つ」ということで、今正に家庭における躾(しつけ)、学校における今日の教育というものが此の「敗子」を生んできているのではないでしょうか。
親は子供の躾(外見を美しくすることではなく、心とその心が表れた立ち振る舞いを美しくすること)に厳たる態度で臨まねばなりませんし、そうした態度で臨むことと子供に愛情を持つということは全く別のことだと思います。
学生時代のhomogeneous(同質的)な社会から年齢や地位等に差のあるheterogeneous(異質的)な社会に入った、甘やかされて育ってきた人達においてその環境変化は非常に大きなものがあり、そのため適応障害を患うこともあるような気がします。
如何なる環境に生きるか分からぬ子供の将来を考えますと、ある程度野生的に育て上げメンタリーに強い人間にして行くのは一つ親の責任だと思われ、親の庇護の下ぬくぬくと微温湯につけて育てるのでは、結果子供にとってマイナスになることが多いようにも感じます。
1年前のブログ『長所を伸ばすべきか、短所を直すべきか』で述べたように私は、長所を伸ばすことにより短所が消えるか或いは抑えられて行くといった形で短所に変化を及ぼすということは間違いなく、長所を出来るだけ伸ばすという教育方法が基本的には正しいのだろうと考えています。
このように子供の育て方で、一つは「美点凝視」にこれ努めその美を更に伸ばす中で、自然と悪い所を目立たなくさせて行くということが大切です。もう一つは、子供が持つ様々な興味をサポートすべく関連する図鑑や本等を買ってあげるとか、常日頃から子供が興味を示しそうな事柄をファインドアウトし更に伸ばすようサポートする、といったことも大切だと思います。上記した適応障害との関連においても、結構大事なことだと思っています。
要は子供が嫌な所から離れて、少し違った世界を自分で持ったり、新たな世界を自分で見出して行くことが出来れば、非常に良いということです。スポーツをすることでも他の趣味を持つことでも何かそうしたちょっとした類で、気分転換するような努力をし子供の心の病を未然に防いで行くことが大切なのです。
之に関しては以下、安岡正篤先生も座右の銘にされていた「六中観(りくちゅうかん:忙中閑有り。苦中楽有り。死中活有り。壺中天有り。意中人有り。腹中書有り)」の一つ、「壺中天有り」の故事を簡単に御紹介しておきます---昔費長房という役人がいました。この人が役所の二階から下の市を見ていたところ、遅くなって皆が店を畳んでいるにも拘らず、一人の老人はいつまで経っても畳まずに残っていました。「なぜだろう」と思って見ていると、その老人は壺を取り出してその中に入って行きました。その老人は仙人であったということです。翌日も同じような光景があり、この役人は「自分もその壺の中に連れて行ってもらおう」と考えてその老人と談判し、一緒に連れて行ってもらえることになりました。そして、その壺の中は素晴しい別天地でありました。
やはり、子供が小さい時から興味・関心・好奇心を様々持てるような環境を作ってあげ、将来ある意味「壺中の天」となるような部分を見出してあげようと腐心するのも親としての大事な務めの一つであって、仮にそれが果たされたならばその子は色々な面で強い人間にもなるでしょう。
英国社数理ばかりで追い詰められ嫌がっている子供に無理矢理、英国社数理ばかりをがみがみと叱りながら教えるというのでは、益々そういったものが嫌いになり仕舞には学校まで嫌になって自閉症になって行く、というのも鬱のみならず最近の一つの大きな問題です。
今年度のノーベル物理学賞を受賞された徳島大学出身の中村修二氏は、寧ろ何糞と思いながらその怒りで以て大変な成果を出しノーベル賞まで行ったわけで、彼のように怒る位の逞しさを身に付ければ鬱などなりっこないのでしょうね。




 

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