北尾吉孝日記

『運命に身を任す』

2021年1月27日 14:55

78歳で大統領に就任するバイデン。40代後半で大統領に就任し、その後若くして一線からは退いたクリントンやオバマのことを考えると、歳とってからピークのある人生は、若い時の葛藤や苦労も大きい分、味わい深いし幸福感を感じるのではないかなと思う。私も死ぬまで、好きで得意なことをやり続けて社会に求められ貢献できる人でありたい。――之は昨年11月8日、米Ripple社の吉川絵美さん(@emy_wng)がツイートされたものです。
以下、此のピークを迎える年齢ということで私見を申し上げますと、ジョン・F・ケネディやビル・クリントン、バラク・オバマ等々40代で米国大統領に就任したケースも多数ありますが、そもそもが「早い」「遅い」といった形で捉えるべき事柄ではないと思っています。
それが早かろうが遅かろうが、十分その職責を果たすだけの人物が練られ能力が養われているか、ということが大事だと思います。また、ジョー・バイデンは次の4年間その任に堪え得るか、という問題もあるでしょう。ずっと堪えることが出来たら良いですが、ある時点で肉体的な限界に達したとなれば、その任を去らなければなりません。
あるいは私どもSBIグループで言えば、『野村超え「時間の問題」、地銀・デジタル全方位で』(2021年01月19日)と題されたNIKKEI Financialのインタビュー記事で、私は「進退についてはどうお考えですか」との問いに対し、下記のように答えておきました。
――気力、体力、知力。そういうものが衰えてきたら言われるまでもなく退くべきだ。そういうふうに中国古典が教えている。僕の能力が落ちてくる。若い人の能力が上がってくる。この交差点がどこかにある。その時には天命をもった人がちゃんと現れるはずだと思っている。ただ、良いか悪いかは別にして、まだ僕の能力が落ちてはいない。経営者に要求される判断力というものはむしろ知見を得て増していく。そういう意味ではまだ僕について来られる人はいない。
天は、私が一線から退くべきベストなタイミングで私の後継者が必ず現れるようにしてくれると思っています。正に人間は会うべきタイミングで会うべき人に必ず会うのです。明治・大正・昭和と生き抜いた知の巨人である森信三先生も述べておられるように、私は、全て此の世に起こることは絶対必然であり且つ絶対最善であるという「最善観」を信じています。
何れにせよ、少なくともその任に堪えられる間は、自分の歳如何といったことは余り関係せずに、唯々与えられた運命に身を任す、ということだと思います。歳を取っているから・若いからといった類に、それ程こだわらなくて良いでしょう。幾つであっても、天意を全うする生き方を貫くだけです。




 

『地方創生への挑戦』

2021年1月14日 14:40

株式会社きんざいから『地方創生への挑戦―SBIグループが描く新しい地域金融』というを上梓しました。来週水曜日20日より全国書店にて発売が開始されます。

新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大は私たちの生活と社会構造に大きな変化をもたらしました。感染リスクを低減するため、人との接触や移動が制限されたことで、デジタルトランスフォーメーション(DX)が一気に加速しました。リモートワークも急拡大し、レストランの料理をオンラインで注文するといった行動様式もすっかり〝新しい日常〞となりました。また、ニューヨークやロンドン、東京といった巨大都市では新型コロナの感染者が著増し、日本では東京一極集中のリスクが顕在化したことで地方分散型社会への転換がこれまで以上に叫ばれています。今までは当たり前のことだと思っていた日常のさまざまなことが、非連続的な変化を迫られています。
こうした大きな困難に見舞われている今はあらゆる面で進化すべき時でもあります。東京一極集中から地方分散型社会へ。ポストコロナは間違いなく地方の時代です。
地方は魅力にあふれています。その魅力、そこで暮らす人たちや企業、行政のことを一番よく理解しているのは、そこに根差した地域金融機関です。実際、私どものもとには、実にさまざまな業種の方々から「地域金融機関の協力を得て地方でビジネスをしたい」との相談が舞い込んでいます。
地域金融機関の強みは、その顧客基盤と長年にわたって培われた地域における「信用」です。地域に根付く中堅・中小企業と幅広く取引をし、個人のお客様とも多くの接点があるだけに、地域におけるブランド力も抜群です。それらはメガバンクや最先端のテクノロジーを持つフィンテック企業でも到底かないません。
もちろん、地域金融機関には本書で触れているような課題が多くあるのも事実です。しかしその課題を克服すれば、間違いなく「持続可能なビジネスモデル」を構築でき、地域も活性化していくはずです。

SBIグループはこれまで3年超にわたり、そうした地域金融機関の諸課題の解決に資するべく提携を強化し、インターネット金融グループとしての先進的なテクノロジー、ノウハウ、ビジネスモデルを提供してきました。2020年12月現在では、7つの地域金融機関との間で戦略的資本・業務提携を行っています。2019年9月の島根銀行との資本・業務提携を皮切りに、それぞれの取り組みで徐々に成果を上げつつあり、十分な手ごたえを感じています。
その上で、今後は地域金融機関のほかに地域住民、地域産業、地方公共団体を加えた4つの経済主体にアプローチすることで地方創生の具現化を目指すべく、2020年8月に志を同じくする複数のパートナーと地方創生に関する企画・戦略を立案し推進していく母体として「地方創生パートナーズ」を設立しました。本書はSBIグループの地方創生への取り組みが地域金融機関との連携からさらに進化し、新たな段階に入ったことをご説明したいと思い、上梓するものです。

ポストコロナの時代に目指すべき地方分散型社会の構築は、SBIグループが地域金融機関とこれまで取り組んできた方向と一致しています。しかし、地方をひとくくりで論じることはできません。それぞれの地域ごとに名物料理があるように、文化や環境が違います。同じ色に染まるのではなく、その地方の持つ特徴や良さ(魅力)を活かしてそれぞれが活性化し、発展していくことが重要です。
SBIグループが地方創生に取り組む根底には、「公益は私益に繋がる」という考え方があります。すなわち、世の為人の為になる活動をしていけば、やがて自らの利益にもつながるという考えで、これはSBIグループの創業時からの想いです。地方が元気になること、それが日本に明るい未来をもたらすと私は信じています。本書が、一人でも多くの方に地方創生への関心を高めていただくきっかけとなり、「ふるさと」の活性化につながれば大変うれしく思います。




 

『年頭所感』

2021年1月4日 11:30

明けまして御目出度う御座います。
今年はコロナ禍中でもあり、いつものようにフェースtoフェースで皆さんにお話し出来なくなり、やむを得ず、ビデオカメラに向かって、吉例に従い、今年(令和三年)の干支でみた年相をお話します。その前に去年の庚子(こうし・かのえね)の年に私がどうお話ししたかを若干振り返りましょう。次のように申し上げました。「庚子の年には、先ず新たな局面が展開するという認識を持ち、継続すべきことと刷新すべきことを峻別することが必要です。~中略~そして因習を打破し、~中略~引き継ぐものは断絶することなく、思い切って新しい局面や環境に対応すべく更新し、進化させて行かなければならないという象であります。そうすることで~中略~新たな芽吹きと繁栄が始まるということです。」
こう申し上げて、その後暫(しばら)くしてコロナ禍で世界中が苦悩する状況になりました。そして、このコロナ禍は世界中で大きな社会変革や深刻な経済問題を引き起こしてきました。私は去年の四月一日に皆さんに、このコロナ災禍はリーマンショック以上のもので、その影響も長く続き、人々の消費行動・投資行動といった様々な経済行動に大きな変化を及ぼし、結果として我々SBIグループの経営環境にも大きな変化が生じることになると予見し、デジタルシフト、キャッシュレスといった流れが加速化すると申し上げました。皆さんがたはこうした変化が我々にとっての勝機になると捉え、コロナ禍でも精力的に業務に励んでくれました。先ず皆さんのこうした努力に深甚なる謝意を表したいと思います。

さて、本題の今年の年相を移りましょう。
今年は、「辛丑」(しんちゅう・かのとうし)です。
「辛」は刑具に用い、切ったり突いたりする鋭い刃物の象形文字で、白川静博士の『字統』によると「辛」は奴隷や罪人に入れ墨をする道具の象形とされています。だから、舌を刃物で刺すようなぴりっとした味のことをこの字を訓読みし、「からい」と言うのです。辛酸、辛辣(しんらつ)という熟語は、そのような意味合いがあります。
さらに「辛」は上を表す二と干と一の会意文字です。干は、求める・冒(おか)す、一は一陽を表し、説文学的には、一陽が上を冒す形とみなします。即ち下に潜伏していた陽のエネルギーが矛盾、抑圧を排除して敢然として上に発現する形であり、前年の庚を次ぐ革新を意味します。その際、後漢の『自虎通義』にあるように、殺傷を生ずることがあります。
また「辛」は新にも通じます。『史記』の律書にも「辛は万物の辛生(新生)を言う」とあります。植物の生育のサイクルで言えば、草木が枯れて、新しくなろうとしている状態を意味しています。
次に「丑」の字義を見ましょう。
白川静博士の『字統』によれば「丑」は手の指先に力を入れ爪を立て、強くものを執る形とあります。『説文』から言うと、母のお腹の中にいた嬰児が体外に出て、右手を伸ばした象形で、今まで曲っていたものを伸ばすところから、「始める」「掴む」「握る」という意味を持っています。
また『漢書律暦志』によると「丑」は紐(ひも)の意とされています。
この糸偏の紐は「紐は束ぬるなり」「紐は結なり」と言われ、束ねる、統率する、結ぶといった意味があります。
さらに、同書に、「子(ね)に孳萌(じぼう:増え芽生える)し、丑に紐芽(ちゅうが)す」と註している。紐芽とは、曲がった腕や、芽が曲がりつつ伸びるのを待つさまで、昨年の子年に出た芽が、伸び悩んでいる形だと解しています。

以上、十干と十二支の字義を組み合わせると、今年の年相は次のようになります。
昨年は新型コロナウイルスのパンデミックにより、世界の社会・経済構造において急激かつ未曾有の大変化が生じました。前年から続く革新への動きは、今年に入り一層強まると考えられます。
「丑」の字義で触れたように新芽が曲がりつつ伸びるのを待つさまで伸び悩んでいる形で、辛と合すると今まで下方に伏在していた活動エネルギーが矛盾や抑圧を排除して敢然として上方に発現するという意味を持ち、本格的な変革が予見されます。そして無理に伸びようとすると傷を伴うこと即ちつらい目に会うという象だと解されます。
この革新の力により、古い時代から新しい時代への転換点になる年とも言えましょう。この転換点こそある程度の痛みを覚悟し、次の良き時代を目指し挑戦していくべき年なのです。
さらに、中国古代の陰陽五行説では「辛」は金の陰に、「丑」は土の陰に分類されます。金と土は「土生金」となり、「相生」の関係にあり、双方の力を生かし強め合う関係にあります。植物で言えば枯れていく草木と新たな命の息吹が互いを生かし合い、強め合うことを意味します。
辛丑の字義とこの相生関係から考察すると今年を端緒として革新の嵐が吹き荒れ、随所で痛みも伴われるが、同時に大きな希望も芽生えてくるということになります。

次に過去の辛丑の年にどんな事があったのか史実から特徴的なものを拾ってみましょう。
・四二〇年前(一六〇一年)徳川家康、関ヶ原の戦に勝利
・一八〇年前(一八四一年)水野忠邦の天保の改革
・一二〇年前(一九〇一年)新世紀即ち二〇世紀の始まる年
1月 イギリスのヴィクトリア女王崩御
2月 日本の重工業発展の要となる官営八幡製鉄所操業開始
4月 日本女子大学校が創立
5月 一九〇一年恐慌。アメリカのニューヨーク取引所で発生したノニザンパシフィック鉄道の買収事件を契機に生じた恐慌
・六〇年前(一九六一年)
1月 ジョン・F・ケネディが史上最年少の四三歳でアメリカの三五代大統領に就任。「ニューフロンティア政策」を掲げた
4月 NHKの朝の連続テレビ小説(朝ドラ)放送開始
4月 人類初の有人衛星、ソ連の宇宙船ボストーク1号が弱冠二七歳のガガーリン飛行士を乗せ一時間四八分に及ぶ地球一周に初めて成功
7月 小児麻痺流行でワクチン投与
8月 東ドイツが東西ベルリンの境界を封鎖。ベルリンの壁を建設
9月 第2室戸台風が室戸岬に上陸し、大阪湾岸に大きな被害
10月 大関の柏戸、大鵬が同時に横綱昇進
10月 坂本九「上を向いて歩こう」(英題SUKIYAKI)が発売される
岩戸景気による高度経済成長の中でレジャーブームが到来。年間の登山者は二二四万人を数え、スキー客は百万人を超えた
一九六〇年一二月二七日に閣議決定された池田勇人内閣による「所得倍増計画」がこの年に始まる

こうして史実の歴表に徴(ちょう)してみますと、前記してきた辛丑の革新、始め、転換点といった年相がよく御理解いただけると思います。
最後に、以上述べた年相を踏まえ、我々SBIグループとしてどうあるべきかについて触れておきます。
第一に、前年のコロナ禍中において、既にニューノーマルと呼ばれる世界が徐々に形成されてきました。我々はそうした事象の中で一体何が今後のより良き社会を実現していく上で本当に有用なものかを十分に吟味していく必要があります。
三密厳守、リモートワーク、テレビ会議、会食・移動・各種イベントの自粛等々により個や組織・社会が分断されバラバラになってきた側面もあり、それらが一時的なのか今後のライフスタイルとして定着するのかを見極める必要があると思います。世の風潮として単に受け入れるのではなく、それらが本当に我々の創業の精神である「顧客中心主義」と合致しているのかを様々な角度から熟考する必要があります。
また、「丑」の字義の一つに「結び」があることを念頭に置くべきでしょう。分断された個や組織・社会がコロナ収束後により良い形で再び繋ぎ直されねばなりません。我々の戦略的取組みである「地方創生」や「オープンアライアンス」もある意味でこうした繋ぎを作ることになるので今後一層注力すべきです。
第二に、様々な経済・社会問題が発生する中で、我々SBIグループの事業に関連する古い制度や枠組を改変し、投資家や金融サービスの受益者を利する新しい制度や枠組を創設することに尽力しなければなりません。今年はそうしたことに最も適した年相なのです。
また、ST(Security Token)等の新しい将来の金融商品やそうした商品のための流通市場の創設も我々が今年取り組むべき重要な課題です。
今年は、近未来の成長の礎(いしずえ)を築くべき年でもあります。
最後に、我々は去年からコロナ禍にばかり気を取られがちですが、コロナ以外の様々なリスクにも対応を忘れずにしておかなければなりません。
例えば今年は、年初から北日本日本海側から北陸、山陰にかけて大雪が降りました。今年は台風や地震等の天災にも備えておく必要があります。
また我々の業務から言えばマーケットリスクにも注意が必要です。株式相場格言で「丑つまずき」と言われていますが、丑年の日経平均は一九四九年五月十六日の取引再開来平均騰落率はマイナス六・三%と十二支中、最下位です。特に夏以降気を付ける必要がありましょう。また円高リスクも高くなると私は見ています。




 
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